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労働判例ジャーナル153号(2024年・12月)
《注目の判例》
有期雇用の大学教員の無期転換申込権と任期法の10年特例
学校法人羽衣学園事件
大学教員の任期等に関する法律(以下「任期法」)は,「先端的,学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み,多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職」に該当する任期付大学教員については,労契法の無期転換申込権の発生が通常の5年(労契法18条)ではなく,10年を超えて契約が継続するときとする特例(以下,「10年特例」)を定めている。
本件は,羽衣国際大学を設置する学校法人羽衣学園(以下,「本件学校法人」)が平成25年3月4日に契約期間3年で更新を1回限りとする契約内容で雇用した任期付専任講師(以下,「本件教員」)が契約更新後の平成30年11月4日に,本件学校法人に対し,本件労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約の締結の申込みをしたところ,本件学校法人が任期法の10年特例を根拠に本件教員には未だ労契法の無期転換申込権が発生していないとしたため,本件教員が本件学校法人に無期転換を認めるよう訴えたものである。
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バックナンバー一覧
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労働判例ジャーナル83号(2019年・2月)
- 注目判例:
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選択要件のある定年後再雇用制度と高年法の継続雇用制度
京王電鉄・京王電鉄バス事件
東京地裁(平成30年9月20日)判決
ポイント
本件は,定年後に会社の再雇用制度のうち「継匠社員制度」による雇用継続を希望したが,それが認められず,別の再雇用社員制度での雇用契約書を取り交わしたバス運転手が「継匠社員」としての地位確認などをバス会社及びその親会社である電鉄会社に求めた事案である。このうち親会社に対する訴えは,確認の利益がないとして却下されている。
本判決は,継続雇用制度の労働条件については,定年退職前と同一の職務内容としなければならないとは言えないとして,「再雇用社員制度」を継続雇用制度と判断した。しかし,継続雇用制度の業務内容も含めた労働条件が… -
労働判例ジャーナル82号(2019年・1月)
- 注目判例:
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会社の代理店主に雇用されていた就業者と会社との黙示の労働契約の成立の可否
ベルコ事件
札幌地裁(平成30年9月28日)判決
ポイント
本件は,冠婚葬祭互助会員の募集及び冠婚葬祭の請負等を主たる事業とする会社と代理店契約を結ぶ者(以下,「代理店主」)と労働契約を締結していた者ら(以下,「本件就業者ら」)が,会社との黙示の労働契約が成立していると主張した事案である。
会社の代理店は,会社が指定する区域内において,会社の営む冠婚葬祭互助会の会員募集,同互助会の締約代理業務,集金業務,互助会入会後の会員の申込名義や住所の変更等の諸届に関する取次業務を委託されていた。本件は… -
労働判例ジャーナル81号(2018年・12月)
- 注目判例:
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幹部社員の試用期間中の解雇
ラフマ・ミレー事件
東京地裁(平成30年6月20日)判決
ポイント
試用期間については,判例は,解約権留保付きの労働契約とした上で,通常の解雇に比べてより広い範囲における解雇の自由が認められるとしている。そして,管理職要員の大卒新規採用者の事案において,企業者が,採用決定後の調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,その事実に照らして解雇に客観的合理的理由があり,社会通念上相当と認められる場合には,試用期間中に留保された解約権を行使できるとの判断基準を示している(三菱樹脂事件・最大判昭48・12・12)。
本件は,中途採用者であり,また幹部職員として 本件は,中途採用者であり… -
労働判例ジャーナル80号(2018年・11月)
- 注目判例:
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育児のために正社員から契約社員に移行した女性従業員の正社員への復帰の可否
ジャパンビジネスラボ事件
東京地裁(平成30年9月11日)判決
ポイント
女性従業員が就労を継続しながら出産・育児ができる環境を整備することは,少子高齢化社会において女性がその能力を発揮するうえで現代の重要な社会的課題となっている。そして,女性従業員の妊娠・出産を契機とする降格は,原則として男女雇用機会均等法9条3項に違反するとする最高裁判例(広島中央保健生協事件・最1小判平26・10・23本誌33号)があるが,出産・育児に関連する労使紛争が相次いでいるようにまだまだ多様な障害がある状況にある。
本件は,この状況を示すものと言える。本件の女性従業員は,保育園が決まらないことから,育児休業終了後,正社員から契約社員に移ることを会社と合意した(以下,「本件合意」とする。)。女性従業員は… -
労働判例ジャーナル79号(2018年・10月)
- 注目判例:
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業務手当と時間外労働手当の一括払いの該当性
日本ケミカル事件
最高裁第一小法廷(平成30年7月19日)判決
ポイント
時間外労働手当などの支払請求においては,使用者が支払っている手当が時間外労働手当などの一括払いに該当するかが論点となる。これまで,判例は,使用者に時間外労働手当の支払いを義務付ける趣旨について,時間外労働等を抑制し,もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに,労働者への補償を行おうとするものとしている(医療法人康心会事件・最二小判平29・7・7本誌67号)。
本判決は,会社が支払っていた業務手当が法定時間外労働に対する割増賃金に該当するかが… -
労働判例ジャーナル78号(2018年・9月)
- 注目判例:
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知的障害及び学習障害を有する新入社員の自殺と会社の安全配慮義務
富士機工事件
静岡地裁浜松支部(平成30年6月18日)判決
ポイント
本件は,知的障害及び学習障害を持つ高卒新規採用の従業員(以下,「本件従業員」とする。)が入社後2か月弱で自殺したことにつき,その両親が,本件従業員の自殺が会社による障害への配慮を欠く対応等が原因であるとして,会社の安全配慮義務違反及び注意義務違反を理由に損害賠償などを請求した事案である。
本件は,本件従業員のように知的障害及び学習障害がある場合,その特性を配慮して会社にどのような安全配慮義務が認められるかを検討するために注目すべき事例と言える。
本判決は,勤務状況などから… -
労働判例ジャーナル77号(2018年・8月)
- 注目判例:
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日雇派遣および日々職業紹介をめぐる法律問題
凸版物流・フルキャスト事件
東京高裁(平成30年2月7日)判決
ポイント
本件は,日雇派遣および日々職業紹介について,多様な問題が裁判で争われた珍しい事案である。リーマンショック後の不況の中での非正規労働者の雇用の不安定性を象徴する問題として日雇派遣が社会的に注目され,労働者派遣法の改正により原則として30日間以内の派遣が禁止されることになった。この結果,日雇派遣は,日々の有料職業紹介に移行していった。本件はまさにそのケースであり,訴えを起こした労働者は,当初は,日雇派遣であり,その後は日々職業紹介によって就労していた。
本件の労働者の主張の一つは,派遣または有料職業紹介の形式をとっているが,実際には労働者供給にあたるということであった。これは,そもそも日雇派遣および日々職業紹介という仕組み自体を否定的に評価する主張と言える。本件の場合… -
労働判例ジャーナル76号(2018年・7月)
- 注目判例:
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出向者に対する復帰命令の適法性
相鉄ホールディングス事件
横浜地裁(平成30年4月19日)判決
ポイント
本判決は,出向者に対する復帰命令が人事権濫用にあたるかということが争われた珍しい事案である。出向者に対する復帰命令については,判例はこれを使用者の権限として承認している(古河電気工業・原子力燃料工業事件・最2小判昭60・4・5)。本件では,使用者に復帰命令権があることを前提に,それが人事権の濫用にあたるかが問われた。
本判決は,バス事業会社の収益を上回っていた持株会社からの出向補填費を削減することは,バス事業の収支改善のため必要であり,出向運転手とプロパー運転手との大きな年収格差が労務管理上適切でなく… -
労働判例ジャーナル75号(2018年・6月)
- 注目判例:
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定年後再雇用者と正社員の労働条件の差異と労働契約法20条
長澤運輸事件
最高裁第二小法廷(平成30年6月1日)判決
ポイント
本判決は,同日に出されたハマキョウレックス事件最判(文献番号25449499)と共に,有期労働契約者と無期労働契約者との労働条件について,不合理な相違を違法とする労働契約法20条に関する最初の最高裁判決である。労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものとし,また,労働条件の相違が適用就業規則の相違によることで期間を理由とする労働条件の相違と判断していること,さらに,賃金項目ごとに趣旨を個別に判断するとしたことは,これまでの下級審の判断を支持していると評価できる…
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労働判例ジャーナル74号(2018年・5月)
- 注目判例:
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正社員と契約社員の労働条件格差と労契法20条
日本郵政大阪事件
大阪地裁(平成30年2月21日)判決
ポイント
本件は,日本郵便の時給制契約社員(以下,「期間雇用社員」)が正社員と郵便物の配送業務など同一内容の業務に従事していながら,手当等の労働条件において正社員と差異があることが労働契約法(以下「労契法」という。)20条に違反するとして,正社員の給与規程及び就業規則の各規定が時給制契約社員にも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに,この差異が同条の施行前においても公序良俗に反すると主張して,正社員の諸手当との差額及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
注目されるのは…