労働判例ジャーナル93号(2019年・12月)

■注目判例
内縁関係を理由とする配転と権利濫用法理
島根県水産振興協会事件
■ポイント
本件は,内縁関係にある夫婦が同じ職場で就労していたところ,夫を別の事業場に配置転換させたことの適法性が争われた事例である。原審の松江地裁判決(平30・6・25本誌79号8頁)は,本件配転命令について,業務上の必要性を踏まえた合理的な判断によるものであることなどから有効と認められるとした。これに対して,本判決は,内縁関係にある夫婦の一方を移動させる本件配転命令は,業務上の必要性がなく,不当な動機,目的に基づいてされたものとして,配転命令権の濫用であるとして本件配転命令を無効とした。
このように本判決が地裁判決と判断を異にしたのは,本件配転命令が決定される経緯を詳細に認定することによって,その目的が不当な動機・目的にあることを認定できたからと言える。判例の判断基準によれば,業務上の必要性は,何らかの企業運営上の合理性が認められれば,肯定されることになるが,本判決においては,不当な動機・目的の判断の過程で,業務上の必要性が名目に過ぎないとしたことも特徴であろう。そして,内縁関係にある従業員らが同じ職場に勤務することを解消するということが,配転命令において不当な動機・目的と評価されることを示したことも注目される。
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