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労働判例ジャーナル150号(2024年・9月)
《注目の判例》
事業主の労災支給処分取消訴訟の原告適格
あんしん財団事件
本件は,札幌中央労働基準監督署長があんしん財団の従業員に対し,労災保険法に基づき,療養補償給付及び休業補償給付の各支給決定(以下「本件各処分」という。)をしたところ,事業主のあんしん財団が本件各処分の取消しを請求し,その前提として,本件各処分により,その納付すべき労働保険料が増額されるおそれがあるなどとして,原告適格があると主張した事案である。
1審判決(東京地判・令4・4・15LEX/DB:25593018)は,あんしん財団の請求を却下したが, 原審( 東京高判令4・11・29LEX/DB:25594714)が,特定事業について,労災保険給付の支給決定がされていると,これによりメリット収支率が大きくなるため,当該特定事業の事業主の納付すべき労働保険料が増額されるおそれがあるため,特定事業の事業主は,その特定事業についてされた労災支給処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,上記労災支給処分の取消訴訟の原告適格を認めた。これに対して国がこれを不服として上告受理申立てをしたものである。
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100号に寄せてご祝辞
早稲田大学 教授 島田 陽一 様
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同志社大学 教授 土田 道夫 様
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成蹊大学 教授 原 昌登 様
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杜若経営法律事務所 弁護士 向井 蘭 様
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バックナンバー一覧
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労働判例ジャーナル110号(2021年・5月)
- 注目判例:
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ユニオン・ショップ制に基づく雇止めの適法性
トヨタ自動車(ユニオン・ショップ雇止め)事件
ポイント
本件は,ユニオン・ショップ制に基づく雇止めが適法とされた珍しい判決である。これまでは,ユニオン・ショップ制度の適用対象が正社員とするのが一般であったために,ユニオンショップ制に基づく解雇が争われてきたが,本件の会社(トヨタ自動車)では,契約期間が2年以上の期間従業員(シニア期間従業員と呼ばれる。)をユニオン・ショップ制度の対象としていたために,ユニオン・ショップ制に基づく雇止めという事案が発生したものである…
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労働判例ジャーナル109号(2021年・4月)
- 注目判例:
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医師の防塵マスク着用での就労と懲戒解雇
医療法人社団和栄会事件
ポイント
本件は,昨年4月のコロナウィルス感染拡大の状況下で,白衣に,硬質の素材でできた防塵マスク,青色のゴム手袋を着用した姿で就労した医師が,その勤務開始日に懲戒解雇されたという珍しい事案である。病院の解雇理由書によれば,その姿が,患者及び近親者の不安をいたずらに惹起し,礼儀を軽んじて職場の秩序を乱し,所沢腎クリニックに甚大な損害を及ぼしたとして…
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労働判例ジャーナル108号(2021年・3月)
- 注目判例:
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従業員の過労死に関する取締役の責任
サンセイ事件
ポイント
本件は,長時間労働の放置による脳出血を直接的死因とする高血圧の基礎疾患を有する従業員の死亡に関する遺族による会社および取締役に対する損害賠償請求である。本事案では,別途労働基準監督署長による労災認定がなされており,また,会社の安全配慮義務違反が認められた事例は珍しくない。本件の特徴は…
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労働判例ジャーナル107号(2021年・2月)
- 注目判例:
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違法な労働審判の口外禁止条項と国家賠償請求
労働審判(口外禁止条項)事件
ポイント
本件は,労働審判において,労働審判委員会が,訴えを起こした労働者に口外禁止条項を付した内容での調停を試みたところ,当該労働者からこれを拒否されたにもかかわらず,口外禁止条項を含む労働審判を行ったことに対して,当該労働者が…
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労働判例ジャーナル106号(2021年・1月)
- 注目判例:
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定年後再雇用の嘱託職員と正職員との労働条件の相違
名古屋自動車学校事件
ポイント
本件は,定年後再雇用の嘱託職員と正職員との労働条件の相違が労契法旧20条のいう不合理にあたるかが争点となった事案である。周知のように,定年後再雇用の有期雇用者と正社員との労働条件の相違については,すでに長澤運輸事件最判(平30・6・1本誌75号1頁)がある。…
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労働判例ジャーナル105号(2020年・12月)
- 注目判例:
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試用期間の延長の有効性
明治機械事件
ポイント
本件は,既卒ではあるが,初職として入社した従業員に対する試用期間の延長が無効とされ,また,解雇が無効とされた事案である。試用期間中または満了時の解雇事案は,少なくないが,試用期間を延長した上で,最終的には解雇した事案は,裁判例として珍しい。…
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労働判例ジャーナル104号(2020年・11月)
- 注目判例:
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労契法旧20条に関する最高裁5判決
労契法旧20条に関する最高裁5判決
ポイント
本年10月13日および15日に最高裁は,労契法旧20条をめぐって5つの判決を下した。これらの最判は,社会的にも大きく取り上げられ,高い関心が示されている。もっとも,各種の賃金・労働条件に関する最判の結論だけに関心が集まり,最判の示した労契法旧20条に関する解釈が十分に正確には伝わっていないようにも思われる。これらの最判においては,日本の多くの企業において…
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労働判例ジャーナル103号(2020年・10月)
- 注目判例:
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長時間労働と安全配慮義務
アクサ生命保険事件
ポイント
本件は,生命保険会社の営業所の育成部長として,営業活動等に従事している従業員(以下,「本件従業員」)が会社に対し,本件従業員に対する懲戒戒告処分は無効であるとして,不法行為責任に基づく慰謝料などを,本件従業員が上司から受けたパワーハラスメントならびに長時間労働について,会社に安全配慮義務違反があるとして,慰謝料などの支払を求めた事案である。
本件従業員の時間外労働は… -
労働判例ジャーナル102号(2020年・9月)
- 注目判例:
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嘱託職員と正社員との基本給・賞与の相違と労契法20条
トーカロ事件
ポイント
本件は,金属等の表面処理加工等を業とする会社(従業員560名)に期間1年の期間の定めのある労働契約により雇用され,21回の更新を経ている女性従業員が,基本給及び賞与が正社員よりも低額であり,地域手当を支給されなかったことが労契法20条に違反するとして会社を訴えた事案である。
労契法20条を巡っては,周知のようにすでに最高裁判決もあり(ハマキョウレックス事件・最判平30・6・1,民集72巻2号88頁,長澤運輸事件・最判平30・6・1),また,多くの下級審裁判例の登場を見ている。ただし,労働条件の相違が争われたのは,各種手当が多く,基本給,賞与という賃金制度の根幹部分については,正面から判断された事案は必ずしも多くなく,また,その判断も統一されていない。このような状況の中で,本件は,基本給,賞与の相違が主たる争点となった事例として注目される… -
労働判例ジャーナル101号(2020年・8月)
- 注目判例:
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人員整理目的の有期労働契約の雇止め
グリーントラストうつのみや事件
ポイント
本件は,自然環境保護を目的とする「公益財団法人グリーントラストうつのみや」(以下,「本件財団」という。)に有期労働契約の反復更新により継続的に勤務していた非常勤嘱託員(以下,「本件非常勤」という。)が,無期転換申込権の発生を前にして雇止めされたことについて,これを違法として,地位確認などを請求した事件である。労契法の無期転換申込権については,使用者がその発生を回避するために,雇止めを行うことが懸念されていたが,本件は,まさにそれが現実化したものと言える。
労契法の適用がない公務員における非常勤職員の地位は…