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労働判例ジャーナル151号(2024年・10月)
《注目の判例》
諭旨解雇の有効性
ヤマト事件
本件は,建築付帯設備工事などを業とする会社(本件会社)に1年間の期限を定めて定年後再雇用され,定年退職前と同様の本件会社の常務執行役員兼A支店業務執行責任者であった従業員(本件従業員)が,令和元年6月12日付け諭旨解雇処分は客観的合理的理由及び相当性を欠くものであるから無効であり,また,期間満了後も雇用契約関係は継続しているなどと主張して,本件会社に対し,①雇用契約上の地位確認,②退職一時金残額(213万2000円)など,③未払いの賃金および賞与並びに④慰謝料などを求めた事案である。
本判決は,本件従業員が外注業者の費用負担で国内旅行に2回及び海外旅行に参加したことが「業務に関し,不正不当に金品,その他の授受をした場合」に該当し,「故意に会社の利益を損なうような行為」および「謀議またはほう助する行為」という懲戒事由に該当し,また,従業員が業務に関して金品等を授受することにより従業員と業者との間に癒着が生じ,本件海外旅行について事前に所定の届出を怠ったことについては「就業規則を守らず,規律を乱す行為」に該当するとされた。しかしながら,本判決は,本件従業員が現に外注先と癒着し,自己又は外注先の利益を図って,会社に損害を及ぼしたとまでは認められないことからすると,その結果が重いとまでは評価できず,諭旨解雇の客観的合理的理由があると認められるか疑問がある。
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バックナンバー一覧
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労働判例ジャーナル61号(2017年・4月)
- 注目判例:
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タクシー運転手の歩合給における割増賃金制度の適法性
国際自動車事件
最高裁第三小法廷(平成29年2月28日)判決
ポイント
本件は,タクシー会社に勤務する乗務員が賃金規則に基づく賃金の算定方法が違法であるために生じている未払い賃金を請求したものである。
歩合給の場合の割増賃金の算定については,これまでも,通常の労働時間に対する賃金と時間外・深夜の労働時間に対する割増賃金とが判別できない場合には,割増賃金を支払ったことにならないとされた例(高知県観光事件・最二小判平6・6・13)や同じように一定範囲の労働時間について,割増賃金を含むとする支払い方法を認めない例(テックジャパン事件・最一小判平24・3・8)が示されてきた。
これに対して本件は,通常の労働時間に対する賃金と割増賃金とを区別することは可能であった。ただし,歩合給の算定にあたって,割増賃金分が控除されるということが許容されるかというこれまでにない論点が -
労働判例ジャーナル60号(2017年・3月)
- 注目判例:
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精神疾患を有する従業員の自殺と業務起因性判断
国・厚木労基署長(ソニー)事件
東京地裁(平成28年12月21日)判決
ポイント
本件は,電気機器メーカーに勤務していた従業員の両親が上司によるパワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。),差別的な評価,上司との軋轢,退職強要,配置転換,長時間労働,病気やケガによるけいれん発作など業務上の原因で,大うつ病性障害を発病し,自殺したと主張して,厚木労働基準監督署長に対し,労働者災害補償保険法に基づき遺族補償給付及び葬祭料の支給を申請したところ,本件監督署長がこれらを支給しない旨の処分をしたことから,その取消しを求めた事案である。
本判決は,まず,適応障害の発症前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷は認められないことから,その業務起因性を否定した。次に適応障害の増悪としての軽症うつ病エピソードの業務起因性判断において,本件従業員に業務上強い心理的負荷がかかる「特別な出来事」があったか,また,心理的負荷の度合いが「特別な出来事」に当たらないが強い心理的負荷と評価される複数の出来事があったかが検討された。その結果,人事部による退職強要があるものの,その心理的負荷の程度は -
労働判例ジャーナル59号(2017年・2月)
- 注目判例:
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大学教員の有期労働契約の雇止めの有効性
学校法人福原学園事件
最高裁第一小法廷(平成28年12月1日)判決
ポイント
本件は,学校法人と有期労働契約を締結していた大学教員の雇止めの事案である。本件有期労働契約は,1年契約で更新の限度が3年であった。本件の大学教員は,1年目の終了時点で雇止めされたが,これを不服として本件訴訟を提起した。
原審判決(福岡高判平26・12・12LEX/DB文献番号25542054,第一審福岡地裁小倉支判平26・2・27 LEX/DB文献番号25503157)は,これらのすべての雇止めの効力を否定した。そして,本件の -
労働判例ジャーナル58号(2017年・1月)
- 注目判例:
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うつ病罹患者の自殺とパワハラに起因する労災
国・仙台労基署長(佐川急便)事件
仙台地裁(平成28年10月27日)判決
ポイント
本件は,運送会社(本件会社)に勤務する従業員(本件従業員)がうつ病に罹患し,自殺したこと(本件自殺)について,このうつ病が上司のパワーハラスメント(パワハラ)に起因し,その結果として本件従業員が自殺に至ったと言えるかが争点となった事案である。
本件判決は,業務の過重性および日常の上司による叱責については労基署長と同様の判断であったが,上司が本件従業員に対してエアガンを撃ったり,唾を吐きかけたりしたという事実を認めた。しかも,本件では -
労働判例ジャーナル57号(2016年・12月)
- 注目判例:
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継続雇用制度による賃金の相違に対する労契法20条の適用
長澤運輸事件
東京高裁(平成28年11月2日)判決
ポイント
労契法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者(正社員)の間の労働条件の相違が不合理であることを禁止している。そして,労働条件の相違が不合理であるかの判断は,①職務の内容,②当該職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の範囲)のほか,③その他の事情を総合的に判断することが必要である。正社員と契約社員などの有期契約労働者との労働条件には相違があるのが一般的であるので,労契法20条の適用問題は,理論的にも実務的にも労働紛争の最重要課題の一つとなっている。
この労契法20条の適用をめぐっては,最近裁判例が相次いでいる。本誌でも本件の地裁判決(東京地判平28・5・13,本誌52号),ハマキョウレックス事件地裁判決(大津地裁彦根支判平27・9・16,本誌48号)および高裁判決(大阪高判平28・7・26,本誌54号)を -
労働判例ジャーナル56号(2016年・11月)
- 注目判例:
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高年法の継続雇用制度における再雇用の労働条件
トヨタ自動車事件
名古屋高裁(平成28年9月28日)判決
ポイント
この事件は,高年齢者雇用安定法(以下,「高年法」という。)に基づく継続雇用に関わる事案である。2012年の改正高年法は,65歳までの雇用安定措置のうち,ほとんどの事業主が選択している継続雇用制度について労使協定の基準による制限を廃止し,高年齢者の希望があるときには,定年後も引き続いて雇用する制度とした。
本事案では,採用基準を定め,期間を最長5年とする再雇用(スキルドパートナー)と希望すれば1年間のみ再雇用されるパートタイマーとの二種類の再雇用制度が設けられていた。このなかで -
労働判例ジャーナル55号(2016年・10月)
- 注目判例:
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会社の歓送迎会参加後の交通事故と労働災害
国・行橋労基署長事件
最高裁第二小法廷(平成28年7月8日)判決
ポイント
この事件は,従業員が会社の中国人研修生の歓送迎会に出席後,業務のために会社所有の車を運転して,会社に戻る際に,研修生を送る途中に起きた交通事故で死亡したことが業務災害に当たるかが争点となった事例である。この従業員の遺族である妻は,夫の死亡を労災として労基署に遺族補償給付及び葬祭料の支給を求めたが,行橋労基署長は,業務上の事故ではないとして,不支給の決定をした。妻がこれを不服として,行橋労基署長の不支給決定の取り消しを求めたのが本事案である
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労働判例ジャーナル54号(2016年・9月)
- 注目判例:
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正社員運転手と契約社員運転手との労働条件の相違の不合理性
ハマキョウレックス事件
大阪高裁(平成28年7月26日)判決
ポイント
この事件は,正社員と契約社員との労働条件の相違が労契法20条のいう「不合理なもの」と言えるかが争われた事案における最初の高裁判決である(原判決については,本誌48号の注目判例のポイントを参照)。正社員と有期労働契約労働者の労働条件の相違が不合理なものであるとして労契法20条違反となるかの判断について,具体的な判断枠組みを示し,労働条件ごとに詳細な判断をしており,今後に影響力を有する注目すべき判決と言える
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労働判例ジャーナル53号(2016年・8月)
- 注目判例:
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海外勤務者の労災保険適用の判断基準
国・中央労基署長(日本運搬社)事件
東京高裁(平成28年4月27日)判決
ポイント
今日,会社が海外事業を展開し,その従業員が海外出張または海外の事業所(別法人であることも多い。)に勤務することは日常的なことである。海外勤務については,海外での事故などでの労災保険の適用が問題となる。労災保険は,日本国内にある事業に適用となり,その事業に雇用される従業員が適用対象者となるのが原則だからである。労災保険の適用対象者が海外出張している場合であれば,事故などが海外において発生しても労災保険の適用を受けることができる。しかし,海外の事業に所属する場合には,労災保険は当然には適用にならない。
そこで,労災保険法は,海外勤務者について,労災保険の特別加入制度の対象としている。ただし, -
労働判例ジャーナル52号(2016年・7月)
- 注目判例:
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継続雇用制度による嘱託社員と正社員との不合理な労働条件格差
長澤運輸事件
東京地裁(平成28年5月13日)判決
ポイント
労働契約法20条をめぐっては,すでに裁判例が登場しており,本誌でも紹介したところである(ハマキョウレックス事件・大津地判平27・9・16本誌48号,2016年3月)。
この事件は,運転手である正社員と契約社員の労働条件の相違が問題となったが,正社員と契約社員の人材活用の範囲が異なることから,通勤手当以外の労働条件の相違が不合理なものではないとされた。本件は,業務の内容は運転手という共通性があるが,定年退職後の継続雇用制度によって勤務を継続している嘱託職員と正社員との労働条件の相違が問題となったという特色がある。本件の嘱託社員は,正社員時代と同様の業務に従事していたのである。
本件で会社は,