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労働判例ジャーナル145号(2024年・4月)
《注目の判例》
研究科の廃止に伴う大学教員に対する整理解雇
学校法人西南学院事件
本件は、学校法人西南学院(以下「本件法人」という。)との間で無期労働契約を締結し、本件法人が設置していた西南学院大学大学院法務研究科(以下、「法科大学院」という。)において就労していた大学教員(以下、「本件教員」という。)が、令和4年3月に本件法人が法科大学院を廃止した後の同年11月30日付けに解雇(以下「本件解雇」という。)されたため、本件教員が、本件法人に対し、本件解雇は無効である旨主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案である。
本件の争点は、大学教員に対する整理解雇の有効性である。したがって、ジョブ型雇用の典型例とも言える大学教員に対する整理解雇がどのように判断されるかいうことが注目される事案と言える。もっとも、本件教員は、大学教員に就任する以前から弁護士として活動しており、専門職大学院である法科大学院においてその実務経験の評価に基づき採用された実務家教員であるという特殊性があることは留意が必要であろう。
ジョブ型雇用に対する整理解雇の問題は、今後の重要な論点になっていくと思われるが、典型的なジョブ型雇用の際の整理解雇を判断する上で、本判決が一つの参考例となるであろう。
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バックナンバー一覧
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労働判例ジャーナル45号(2015年・12月)
- 注目判例:
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外回り営業のみなし労働時間該当性
落合事件
東京地裁(平成27年9月18日)判決
ポイント
事業場外みなし労働時間制は,単に事業場外で就労しているだけではなく,そのことにより労働時間が算定し難い場合でなければならない。
この労働時間を算定し難い場合の該当性については,裁判例は厳しい判断を下す傾向にあるが,本判決は,「事業場外において従事する業務が「労働時間を算定し難いとき」に該当するか否かは,業務の性質,内容やその遂行の態様,状況等,使用者と事業場外の業務に従事する労働者との間の業務に関する指示及び報告の方法,内容やその実施の態様,状況等を踏まえ,使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難といえるかによって判断すべきであり… -
労働判例ジャーナル44号(2015年・11月)
- 注目判例:
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社労士事務所によるパワハラと名誉棄損行為
神奈川SR経営労務センター事件
東京高裁(平成27年8月26日)判決
ポイント
本件は,社会保険労務士等を構成員とする労働保険事務組合である神奈川SR経営労務センター(以下「SR」という。)の従業員が,職場のパワーハラスメント等による損害の賠償を求めてSR及び代表者会長他1名を相手として提起した訴訟において,平成24年11月26日に裁判上の和解が成立したにもかかわらず,その後,SR,会長及び副会長らが,前訴和解の合意事項を遵守せず,名誉毀損行為を行ったため,SRらに和解条項の義務違反があったかが争点となった事案である…
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労働判例ジャーナル43号(2015年・10月)
- 注目判例:
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労働契約法19条と学生アルバイトの雇止め
シャノアール(カフェ・ベローチェ)事件
東京地裁(平成27年7月31日)判決
ポイント
2012年の労働契約法改正は,それまでに確立していた有期労働契約の雇止めに関する判例法理を立法化するだけではなく(労働契約法19条),有期労働契約が更新されて5年を超えるときには,当該有期労働契約者に無期転換申込み権が発生し,この権利が行使されると,使用者がこれを承諾したとみなすという制度を創設した(同法18条)。いわゆる有期労働契約の無期転換制度である。
このような状況の中で, -
労働判例ジャーナル42号(2015年・9月)
- 注目判例:
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組織的な嫌がらせと退職勧奨
大和証券・日の出証券事件
大阪地裁(平成27年4月24日)判決
ポイント
本件は,大手証券会社の小会社である証券会社に出向して同社で営業業務に従事していた従業員が,そもそも転籍の合意は成立していない又は無効であるなどとして,転籍元に対し,労働契約に基づき,労働者たる権利を有する地位にあることの確認及び転籍後の賃金の支払を求めるとともに,転籍先に出向した後,上司から様々な嫌がらせを受けて精神的損害を被ったが,これらの行為は,両社が共謀して行ったものであるとして,共同不法行為に基づき,両社に対し,連帯して,慰謝料200万円などの支払を求めた事案である。
従って,本件の争点は,①転籍合意の成否,②転籍先での種々の行為が本件従業員に対する嫌がらせであり,不法行為にあたるか,及び③転籍元が不法行為責任を負うかである。 -
労働判例ジャーナル41号(2015年・8月)
- 注目判例:
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元社会保険庁職員による分限免職処分取消請求
社会保険庁事件
大阪地裁(平成27年3月25日)判決
ポイント
本件は,社会保険庁(以下「社保庁」)の職員らが,社保庁の廃止に伴い,分限免職処分(国家公務員法78条4号「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」,(以下「国公法」)を受けたことを不服として,その取消しと損害賠償を国などに請求した事案である。
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労働判例ジャーナル40号(2015年・7月)
- 注目判例:
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打切補償と労災給付
学校法人専修大学事件
最高裁第二小法廷(平成27年6月8日)判決
ポイント
本件は,業務上災害(頸肩腕症候群)のため休業していた学校法人職員について,学校法人が,その「災害補償規程」にもとづき,労基法81条の定める打切補償(平均賃金の1200日分相当額,1629万3996円)を支払ったうえで当該職員を解雇したところ,当該職員が本件解雇を業務上災害によって療養中の労働者の解雇を禁止する労基法19条1項に違反し,無効であると主張して,学校法人に対し地位確認等を求めた事案である。
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労働判例ジャーナル39号(2015年・6月)
- 注目判例:
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セクハラを理由とする懲戒・降格処分取消請求
海遊館事件
最高裁第一小法廷(平成27年2月26日)判決
ポイント
本件は,水族館に勤務する男性従業員らが,それぞれ複数の女性従業員に対して性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント等をしたことを懲戒事由として水族館から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに,これらを受けたことを理由に下位の等級に降格されたことから,水族館に対し,出勤停止処分について懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり,降格もまた無効であるなどとして水族館を訴えた事案である。
本判決は,「職場におけるセクハラ行為については, -
労働判例ジャーナル38号(2015年・5月)
- 注目判例:
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職業安定法の手数料との差額分不当利得返還請求
宝木スタッフサービス(ホテルサンバレー)事件
宇都宮地裁大田原支部(平成27年1月21日)判決
ポイント
本件は,職業紹介を受けたホテルが職業紹介所に過払いの手数料の返還を求めたという事案である。従って,労働紛争ではないが,ホテルと職業紹介による従業員との間の雇用が期間の定めのない労働契約であるか,日々雇用であるかが事案の主要な争点であるので,ここに取り上げることとした。
職業紹介の紹介手数料には厳しい制約があることもあって,有料職業紹介業者によって,雇用形態を日々雇用の形態として紹介し, -
労働判例ジャーナル37号(2015年・4月)
- 注目判例:
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社会保険加入手続遅延等に基づく損害賠償請求
P社事件
東京地裁(平成26年12月24日)判決
ポイント
本件は,商業デザインの企画,制作,販売等を業とする会社に勤務する従業員が入社時から現在に至るまでの間,会社の代表取締役であるBから継続的にパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントを受け,これにより人格権を侵害され,精神的苦痛を被ったとして,Bに対し不法行為に基づき,会社に対し,代表者の職務行為により損害を与えられたとして(会社法350条参照)損害賠償と,また,労働契約上の職場環境配慮義務ないし健康配慮義務違反に基づき,慰謝料2000万円等を求めたものである。
本件従業員の主張は,パワハラ,セクハラ,男女差別などの多岐にわたっていたが,いずれもそれらの事実の立証が不十分であり,ほとんどの主張が認められなかった。判決において整理された主張を見る限り,2000万円という高額の損害賠償を請求しているにしては,主張を裏付ける十分な客観的証拠がなかったように思われる。
本件で主張が認められたのは, -
労働判例ジャーナル36号(2015年・3月)
- 注目判例:
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療養休職期間満了に基づく解雇無効地位確認等請求
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
東京地裁(平成26年11月26日)判決
ポイント
本件は,うつ病にり患し,業務外傷病者として会社の療養休職によって休職していた従業員(以下,「本件休職従業員」という。)について,会社が療養期間満了の時点で,当該従業員の療養休職事由が消滅していないとして解雇(以下,「本件解雇」という。)したことに対し,当該従業員が本件解雇を無効として争ったものである。
うつ病などの精神疾患のために休業した従業員の復職をめぐる法的紛争の