労働判例ジャーナル59号(2017年・2月)

■注目判例

大学教員の有期労働契約の雇止めの有効性

学校法人福原学園事件
最高裁第一小法廷(平成28年12月1日)判決

■ポイント

 本件は,学校法人と有期労働契約を締結していた大学教員の雇止めの事案である。本件有期労働契約は,1年契約で更新の限度が3年であった。本件の大学教員は,1年目の終了時点で雇止めされたが,これを不服として本件訴訟を提起した。
 原審判決(福岡高判平26・12・12LEX/DB文献番号25542054,第一審福岡地裁小倉支判平26・2・27 LEX/DB文献番号25503157)は,これらのすべての雇止めの効力を否定した。そして,本件の有期労働契約の3年という期間を試用期間と解し,特段の事情のない限り期限の定めのない雇用契約に移行するとの期待に客観的な合理性があると解し,本件の労働契約が期間の定めのない労働契約に移行したとした。
 本判決は,最初と2回目の雇止めについては,原審判決と同様にその効力を否定した。しかし,3回目の雇止めの効力を認め,本件有期労働契約が3年で終了するとしたのである。有期労働契約の締結時に更新の限度を定めることは,一般に有効と判断されている。従って,本件でも雇用継続について3年を超える合理的期待は生じないと解釈されるのが普通である。しかし,原審判決では,この3年という期間を試用期間と解釈することによって,3年後には,期間の定めのない労働契約に移行するという解釈を示したのである。
 大学教員のケースではあるが,有期労働契約の雇止めに関する最高裁の事例判断として注目されるものである。

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目次

【注目判例】

◆ 大学教員の有期労働契約の雇止めの有効性

学校法人福原学園事件

最高裁第一小法廷(平成28年12月1日)判決

◆ 元大学教員の再雇用拒否無効等請求

学校法人尚美学園事件

東京地裁(平成28年11月30日)判決

◆ 転居を伴わない配転命令の無効等確認請求

一般社団法人日本造船工業会事件

東京地裁(平成28年11月29日)判決

◆ くも膜下出血発症の業務起因性

国・中央労基署長(くも膜下出血発症)事件

東京地裁(平成28年11月28日)判決

◆ 無期労働契約に転化したこと等に基づく地位確認等請求

ソクハイ事件

東京地裁(平成28年11月25日)判決

◆ 雇用契約に基づく未払賃金等支払請求

丸相建設工業事件

東京地裁(平成28年11月24日)判決

◆ 部下への暴言等に基づく懲戒解雇無効確認等請求

ディーコープ事件

東京地裁(平成28年11月16日)判決

◆ 国に対する療養補償給付等不支給処分無効確認請求

国・中央労基署長事件

東京地裁(平成28年11月14日)判決

◆ 違法な退職勧奨に基づく損害賠償等請求

碧南市事件

名古屋高裁(平成28年11月11日)判決

◆ 労基署の採決取消及び職務遂行義務付請求

国・東京労働局労働基準部監督課事件

東京地裁(平成28年11月10日)判決

◆ 市に対する自殺した職員の遺族らの損害賠償請求

糸島市事件

福岡高裁(平成28年11月10日)判決

◆ 破損事故による損害金の給与からの相殺の有効性

フソー化成事件

東京地裁(平成28年10月31日)判決

◆ コンビニ店長の雇用契約上の義務違反に対する損害賠償等請求

柚木商事事件

東京地裁(平成28年10月27日)判決

◆ パンの製造に従事していた労働者の腰痛の業務起因性

国・品川労基署長(腰部傷病発症)事件

東京地裁(平成28年10月27日)判決

◆ アルバイトの雇止め無効地位確認等請求

ジャパンレンタカー事件

津地裁(平成28年10月25日)判決

◆ 雇止め無効雇用契約上の地位確認等請求

象印マホービン事件

大阪地裁(平成28年10月20日)判決

◆ 改正後の旅費規程適用の可否

第一貨物事件

東京地裁(平成28年10月18日)判決

◆ 個別合意のない配転命令の有効性

パナソニック事件

大阪地裁(平成28年10月6日)判決

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