労働判例ジャーナル53号(2016年・8月)

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■注目判例

海外勤務者の労災保険適用の判断基準

国・中央労基署長(日本運搬社)事件
東京高裁(平成28年4月27日)判決

■ポイント

 今日,会社が海外事業を展開し,その従業員が海外出張または海外の事業所(別法人であることも多い。)に勤務することは日常的なことである。海外勤務については,海外での事故などでの労災保険の適用が問題となる。労災保険は,日本国内にある事業に適用となり,その事業に雇用される従業員が適用対象者となるのが原則だからである。労災保険の適用対象者が海外出張している場合であれば,事故などが海外において発生しても労災保険の適用を受けることができる。しかし,海外の事業に所属する場合には,労災保険は当然には適用にならない。
 そこで,労災保険法は,海外勤務者について,労災保険の特別加入制度の対象としている。ただし,海外勤務者がこの特別加入制度の適用を受けるためには,会社が海外勤務者について,特別加入の申請をし,政府の承認を得る必要がある(労災保険法36条1項)。
 従って,海外において勤務していた従業員が現地で事故などにあった場合,海外出張者とされるのか,海外の事業に勤務する者(以下,「海外派遣者」とする。)とされるのかの判断基準が問題となる。この問題について行政解釈(昭和52年3月30日基発第192号の25)は,「単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず国内の事業場に所属し,当該事業場の使用者の指揮に従って勤務するのか,海外の事業場に所属して当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになるのかという点からその勤務の実態を総合的に勘案して判断されるべきものである」としている。本事案は,まさにこの解釈が問題になった事案である。

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目次

【注目判例】

◆ 海外勤務者の労災保険適用の判断基準

国・中央労基署長(日本運搬社)事件(付原審)

東京高裁(平成28年4月27日)判決

◆ 賃金規定の不利益変更と未払時間外割増賃金請求

南大阪センコー運輸整備事件

大阪地裁(平成28年4月28日)判決

◆ 労組法上の使用者性と中労委再審査申立棄却命令取消請求

国・中労委(大阪広域生コンクリート協同組合ほか)事件

東京地裁(平成28年4月28日)判決

◆ ラーメン店の従業員による未払賃金等支払請求

らーめんα店事件

東京地裁(平成28年4月28日)判決

◆ ハイヤー運転手の被爆と損害賠償請求

日の丸リムジン・共同通信社事件

東京地裁(平成28年4月27日)判決

◆ 契約期間途中の解雇と未払賃金請求

東京アメリカンクラブ事件

東京地裁(平成28年4月27日)判決

◆ うつ病自殺の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求

サノフィ(うつ病自殺)事件

東京地裁(平成28年4月26日)判決

◆ 歩合制賃金制度における未払賃金等支払請求

国際自動車事件

東京地裁(平成28年4月21日)判決

◆ 試用期間中の解雇無効地位確認等請求

あじあ行政書士法人事件

東京地裁(平成28年4月20日)判決

◆ 降格・出向措置の無効確認等請求

長谷川ホールディングス事件

東京地裁(平成28年4月20日)判決

◆ 美容院経営者に対する未払賃金・不当利得返還等請求

美容院A事件

東京地裁(平成28年4月19日)判決

◆ 国歌斉唱等拒否を理由とする定年後の採用不合格処分

東京都事件

東京地裁(平成28年4月18日)判決

◆ 高次脳機能障害に基づく療養補償給付等不支給処分取消請求

国・北大阪労基署長(高次脳機能障害)事件

東京地裁(平成28年4月18日)判決

◆ 派遣労働者の派遣先・元に対する地位等確認請求

みずほ銀行(みずほビジネスパートナー)事件

東京地裁(平成28年4月15日)判決

◆ 未払割増賃金と競業禁止規定に基づく退職金減額分等支払請求

EVOLUTION JAPAN事件

東京地裁(平成28年4月15日)判決

◆ 労働組合による不当労働行為申立棄却命令取消請求

国・中労委(国鉄千葉動力車労働組合)事件

東京地裁(平成28年4月11日)判決

◆ 宗教法人に対する未払賃金等請求

仁和寺事件

京都地裁(平成28年4月12日)判決

◆ 能力不足等を理由とする解雇無効地位確認等請求

ジェー・ピー・モルガン・チェース・バンク・ナショナル・アソシエーション事件

東京地裁(平成28年4月11日)判決

◆ 管理監督者として支払われなかった時間外割増賃金等支払請求

AGORA TECHNO事件

東京地裁(平成28年3月25日)判決

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