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最新刊
労働判例ジャーナル148号(2024年・7月)
《注目の判例》
職種限定契約と配転命令
社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件
本件は,社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会(「本件法人」という。)に雇用され,本件法人が指定管理者である福祉用具センターにおいて,福祉用具の改造等(「本件業務」という。)に係る技術職として勤務していた職員(「本件職員」という。)が,職種及び業務内容を技術職に限定する旨の合意(「本件合意」という。)にもかかわらず,本件職員の同意なしに本件法人が下した総務課施設管理担当への配置転換命令(「本件配転命令」という。)を違法として本件法人に損害賠償を請求した事案である。
本判決は,「労働者と使用者との間に当該労働者の職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合には,使用者は,当該労働者に対し,その個別的同意なしに当該合意に反する配置転換を命ずる権限を有しない」との規範を示し,原審判決が,本件法人が本件配転命令をする権限を有していたことを前提としていることを誤りとしたのである。本判決は,解雇回避という目的があることによって,職種限定の労働契約における配転命令権の範囲が広がるわけではないという理論的には当然なことを確認した重要な意義があると言える。
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100号に寄せてご祝辞
早稲田大学 教授 島田 陽一 様
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同志社大学 教授 土田 道夫 様
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成蹊大学 教授 原 昌登 様
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杜若経営法律事務所 弁護士 向井 蘭 様
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年間利用料 | 26,400円(24,000円+税) |
バックナンバー一覧
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労働判例ジャーナル138号(2023年・9月)
- 注目判例:
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性同一性障害者の性自認に対応するトイレの自由利用
経産省職員事件
ポイント
本件は,性同一性障害を有する経産省職員(以下,「本件職員」という)が自己の性自認に対応するトイレの自由利用を制限する庁舎管理権に基づく経産省の措置を取り消すよう人事院に措置要求を求めたが,人事院がこ措置要求を認めなかったため,この人事院の判定の取り消しを求めたものである。1審判決(東京地判令元・12・12本誌96号2頁LEX/DB25580421)は,経産省の措置を違法として国・経産省に国家賠償法に基づく損害賠償請求を認め,また,人事院の判定を取り消した。しかし,原審判決(東京高判令3・5・27本誌113号2頁LEX/DB25569720)は,人事院に対する請求を棄却し,国・経産省に対する損害賠償についても一部を認めるにとどまった。そこで,本件職員が最高裁に上告受理申立てしたのが本判決である。
本判決は,企業が… -
労働判例ジャーナル137号(2023年・8月)
- 注目判例:
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公務員の懲戒免職と退職手当の不支給処分
宮城県・県教育委員会(退職手当)事件
ポイント
本件は,公立学校教員であった者(本件教員)が,酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分(本件懲戒免職処分)を受けたことに伴い,職員の退職手当に関する条例により,退職手当管理機関である宮城県教育委員会(県教委)から,一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分(本件全部支給制限処分)を受けたため,宮城県・県教育委員会を相手に,上記各処分の取消しを求めた事案である。
1審判決(仙台地判令和3・12・2)も原審(仙台高判令和4・5・26本誌128号14頁LEX/DB25592747)も懲戒免職処分を有効としながらも,退職手当の全部支給制限処分をした県教委の判断を裁量権の濫用とした。そして,原審は… -
労働判例ジャーナル136号(2023年・7月)
- 注目判例:
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育児休業等取得後の人事措置と不利益取扱い
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド事件
ポイント
本件は,チームリーダーとして37人の部下を統率していた女性従業員(本件従業員)が育児休業等の取得後復職したところ,職務等級(職務等級:バンド35,部長営業管理職)は維持されたものの,一人の部下も付けずに優先業務として自ら電話営業をさせたことなどが均等法9条3項または育介法10条の禁止する不利益取扱いであるなどとして会社を訴えた事案である。
妊娠・出産後の人事上の措置をめぐっては,広島中央保健生協事件最判(平26・10・23本誌33号2頁LEX/DB25446716)が,降格を原則として,均等法9条3項の禁止する不利取扱いと判断しているところである。この最判との関係で本件を見ると… -
労働判例ジャーナル135号(2023年・6月)
- 注目判例:
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賃金からの経費控除の有効性
住友生命保険事件
ポイント
本件は,保険会社の営業職員が賃金からの経費の控除を違法として,不当利得に基づく返還請求などを求めた事件である。このような事案が裁判例に登場することは必ずしも多くなく,かつ,検討すべき法的論点もあり,注目すべき判決と言えよう。
営業職員が長年にわたる賃金からの経費控除を不当と考えたのは… -
労働判例ジャーナル134号(2023年・5月)
- 注目判例:
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公立学校教員の時間外労働手当請求
埼玉県公立小学校教員(時間外労働手当)事件
ポイント
本件は,埼玉県の公立学校教員が,公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下,「給特法」という)による教職調整給が予定する時間外労働がいわゆる超勤4項目に限定されており,それ以外の勤務外時間については,労基法37条に基づく時間外労働手当が発生するなどとして県に割増賃金の請求などをした事案である。
公立学校教員は,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的… -
労働判例ジャーナル133号(2023年・4月)
- 注目判例:
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時間外労働手当の定額払いの有効性
熊本総合運輸事件
ポイント
本件は,運輸会社の運転手の歩合給的な色彩の濃い給与体系において法定時間外労働手当の取扱いが争点となった事案である。本件の運輸会社の給与は,もともと,賃金総額を歩合給的な観点から時間外労働等の有無やその多寡と直接関係なく決定してきた。本件割増賃金は,時間外労働手当と調整手当からなるが,調整手当は,本件割増賃金から時間外労働手当を差し引いた額とされたのである。この結果,基本給などの通常の労働時間に対応する賃金は低額となり,実際に月80時間程度…
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労働判例ジャーナル132号(2023年・3月)
- 注目判例:
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同僚従業員によるパワー・ハラスメントと会社の責任
東海交通機械事件
ポイント
本件は,同僚従業員による暴力を含む行為の一部が違法なパワー・ハラスメントと認定され,加害従業員と使用者責任のある会社に損害賠償の支払いが命じられたものである。職場の先輩従業員である同僚の行為は,暴力を含むものであり,典型的なパワー・ハラスメント事案と言える。もっとも,同僚従業員のその他の行為は,パワー・ハラスメントとは認定されず…
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労働判例ジャーナル131号(2023年・2月)
- 注目判例:
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退職合意の成立要件
近鉄住宅管理事件
ポイント
労働契約の終了をめぐる紛争類型として退職の意思表示または退職合意の存否をめぐる問題がある。本件は,マンション管理員(本件従業員)と会社との退職合意の存在が否定された事案である。退職合意=合意解約は,一般に労働者の退職の申入れに対する使用者の承諾によって成立する。また,労働者の退職の申入れは,使用者の承諾があるまでは,これを撤回できると解されている。
本件では,会社は,本件従業員から電話で退職の申入れがあり,その日に承諾しているので,退職合意が成立したと主張していた。しかしながら,本判決は,本件従業員からの退職の申入れがあったこと自体に疑念を示している… -
労働判例ジャーナル130号(2023年・1月)
- 注目判例:
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賞与の支給日在籍要件の適法性
医療法人佐藤循環器科内科事件
ポイント
本件は,賞与の支給日在籍要件が争点となった事例である。賞与の支給日在籍要件については,判例は,賞与が賃金の後払い的性格に加えて,功労報償的性格及び将来の貢献に対する期待などの複合的性格があることを前提として,支給日在籍要件を肯定する例が多い(例えば,大和銀行事件・最1小判昭57・10・7)。もっとも,従業員が退職日を任意に選択できることが支給日在籍要件を有効とする前提となっているので,学説においては,この前提が欠けるような定年退職及び整理解雇のような場合には,支給日在籍要件の適用が公序違反(民法90条)と見るものが多い。
本件は… -
労働判例ジャーナル129号(2022年・12月)
- 注目判例:
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家政婦兼訪問介護ヘルパーの家事使用人該当性
国・渋谷労基署長(介護ヘルパー)事件
ポイント
本件は,訪問介護事業及び家政婦紹介あっせん事業等を営む会社(以下,「本件会社」という。)に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録されていた者(以下,「本件介護ヘルパー」という。)が本件会社から,個人宅において家政婦兼訪問介護ヘルパーとして勤務していた登録家政婦の1週間の休暇を代替するために勤務していたことが本件介護ヘルパーの勤務終了後の死亡原因であるとして,本件介護ヘルパーの夫が渋谷労働基準監督署長に対し,労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付などを請求したところ,同労働基準監督署長が本件介護ヘルパーについては労働基準法116条2項所定の「家事使用人」に該当するので労働基準法及び労働者災害補償保険法は適用されないという理由で労災保険給付をいずれも不支給とする処分をしたことから,労働基準監督署長らに対し,上記の各処分には違法があると主張して,その取消しを求めた事案である。
本判決は…