労働判例ジャーナル143号(2024年・2月)

■注目判例

営業秘密の漏洩と懲戒解雇

スカイコート事件

■ポイント

 本件は,不動産売買等を目的とする株式会社(「本件会社」)の経理部長代理の職にあった元従業員が,本件会社の営業秘密を複製,漏洩したこと等を理由として,自宅待機の後に懲戒解雇され,賞与,退職金を支給されなかったこと等に関し,元従業員が本件会社に対して,賞与,退職金などを請求した事案である。本件の争点は,元従業員が約8000件のファイルデータの持出行為,及び他会社の情報を元社長に送ったことが就業規則に定める懲戒解雇事由にあたるかにあった。
 これらの元従業員の懲戒事由に該当する行為などは,これまでの功労報償を完全に減殺する悪質な行為であるとして,元従業員の退職金請求も退けられた。
 本判決の結論は,元従業員の行為の悪質性を考えると当然の結論と言えよう。ただし,本判決は,結論には影響がなかったものの本件会社が挙げた懲戒解雇事由として挙げた元従業員の複数の行為について,懲戒解雇事由にあたらないともしている。この点も含めて本判決を読むことが必要であろう。

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目次

◆ 営業秘密の漏洩と懲戒解雇

スカイコート事件

東京地裁(令和5年5月24日)判決

◆ 未払賃金等支払請求が一部認められ(本訴),損害賠償等請求が斥けられた(反訴)例

ハイスタンダードほか1社事件

大阪地裁(令和5年10月26日)判決

◆ 勤務不良等を理由とする解雇無効地位確認等請求が認められた例

サラダコスモ事件

岐阜地裁多治見支部(令和5年10月25日)判決

◆ 業務によって貯まったポイントの私的費消を理由とする解雇が有効であるとされた例

中央建物事件

大阪地裁(令和5年10月19日)判決

◆ 未払賃金等支払請求,未払割増賃金支払請求及び付加金等支払請求が一部認められた例

カウカウフードシステム事件

大阪地裁(令和5年10月12日)判決

◆ 解雇が無効であるとして,未払賃金等支払請求が一部認められた例

NPO法人関西七福神グループ事件

大阪地裁(令和5年10月6日)判決

◆ 配転先就労義務不存在確認等仮処分申立が斥けられた例

スマット事件

大阪地裁(令和5年10月5日)決定

◆ 動画公開による名誉侵害に基づく損害賠償等請求が一部認められた例

Isono事件

大阪地裁(令和5年10月3日)判決

◆ 違法な懲戒処分及び配転処分に基づく慰謝料等請求が一部認められた例

富士吉田市事件

甲府地裁(令和5年10月3日)判決

◆ 人事権濫用に基づく降格無効地位確認等請求が一部認められた例

ディーンモルガン訴訟承継人リンクアカデミー事件

大阪地裁(令和5年9月28日)判決

◆ 教授に対する職場環境悪化等を理由とする懲戒処分取消等請求が認められた例

公立大学法人下関市立大学事件

山口地裁下関支部(令和5年9月26日)判決

◆ 罰金等の名目で受領した金員についての不当利得等返還請求が一部認められた例

小野商事事件

東京地裁(令和5年6月30日)判決

◆ 専務執行役の従業員としての未払退職金等支払請求が一部認められた例

学究社事件

東京地裁(令和5年6月29日)判決

◆ 退職した元従業員らの競業行為に対する損害賠償等請求及び差止め請求が斥けられた例

創育事件

東京地裁(令和5年6月16日)判決

◆ 女性従業員に対する不適切言動を理由とする雇止め無効地位確認等請求が斥けられた例

ゲオストア事件

東京地裁(令和5年6月14日)判決

◆ 業務遂行能力欠如を理由とする試用期間満了時の解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

ロート製薬事件

東京地裁(令和5年6月14日)判決

◆ 上司の侮辱的発言等に基づく会社及び上司に対する損害賠償等請求が一部認められた例

ブレア事件

東京地裁(令和5年6月8日)判決

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