「改正育児介護休業法の成立」

 育児介護休業法及び雇用保険法の一部を改正する法律(令和3年法律第58号)が本年6月3日に成立し、同月9日に公布されました。

 

 改正の趣旨は、「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる」ものとされています。

 

 育児介護休業法の主な改正点は、①男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、②育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、③育児休業の分割取得、④育児休業の取得の状況の公表の義務付け(常時雇用する労働者数が1000人超の事業主のみ。)、及び、⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和です。このほか、雇用保険法の主な改正点は、⑥-1:①と③の改正を踏まえた育児休業給付に関する所要の規定の整備、⑥-2:出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースの解消のために被保険者期間の計算の起算点に関する特例を設けること、です。

 

 育児介護休業法の改正点の施行日は、近い順に、②・⑤が2022(令和4)年4月1日、①・③が公布日から1年6か月を超えない範囲内の政令で定める日、④が2023(令和5)年4月1日です。雇用保険法の改正点は、⑥-1が公布日から1年6か月を超えない範囲内の政令で定める日、⑥-2が公布日から3か月を超えない範囲内の政令で定める日です。④を除き企業規模による取扱いの差はありません。

 

 このうち、就業規則の変更が必須となるのは①・③・⑤と思われます。ただし、改正に関する詳細は追って省令等で定められる予定ですので、そちらも確認した上で判断する必要があります。

 

 ①は、現行の育児休業とは別枠の新たな育児休業であり、子の出生後8週間以内の4週間に取得できるものです。申出期限は原則として休業開始の2週間前まで、分割して2回の取得が可能です。さらに、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することができるという点は、これまでの休業制度との大きな違いです。

 

 ③は、従来の育児休業についても、分割して2回まで取得でき、さらに1歳以降に延長する場合は、延長後の育児休業開始日を1歳や1歳半の初日に限定せず、柔軟化する(期間途中でも夫婦交代での取得を可能とする)ものです。

 

 ⑤は、「引き続き雇用された期間が1年以上」との取得要件を法律からは削除し、労使協定を締結すれば設けられる要件とするものです(無期労働者と同様の取扱いとなります。)。

 

 改正法対応に関し引き続き厚生労働省からの情報発信に注目です。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

※厚生労働省「令和3年改正法の概要」:こちら

 

※厚生労働省リーフレット「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」:こちら

 

(2021年6月14日)

 
 
________________________________________________________
★関連テーマの講演を開催します★
講師は当コラム担当の町田弁護士です。ぜひご参加ください
▼労働法学研究会・例会第2860回
「改正育児介護休業法解説-新設された企業への義務とは」

 

一覧へ戻る