「副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説(パンフレット)の公表」

 副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定を本年9月に本コラムでご紹介しました」。今般、「副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説」(パンフレット)が公表されました。

 

 本パンフレットは、労使双方を対象としており、①副業・兼業を認めるにあたって、②副業・兼業を始める前に、③副業・兼業が始まったら、という順で労使が確認すべき事項が解説されています。①は副業・兼業を許可制から届出制に変更する際の就業規則の定め方など、②は副業・兼業を希望する労働者に使用者はどのような事項を確認すべきか(届出書の様式例あり)、また、副業・兼業の開始にあたり労使双方で合意すべき内容は何か(合意書の様式例あり)など、③は労働時間の通算制の考え方です。届出書や合意書の様式例は具体的な内容で、Wordファイルをダウンロードして利用することもでき、実務上参考になります。

 

 問題はやはり、③の労働時間の通算制です。本パンフレットでは、(A)「原則的な労働時間管理の方法」として労働時間の通算制の考え方が、(B)「簡便な労働時間管理の方法」として管理モデルが紹介されています。ガイドラインだけを読むよりは本パンフレットがあった方がわかりやすいことは確実で、特に、(A)に関しては、日々の実労働時間のどの部分を時間外労働としてカウントすべきかを一応理解できます。もっとも、理解できたらできたで、本業と副業・兼業先の所定労働日が重なっている場合に、その全所定労働日についてガイドラインで示されている考え方に基づきどの部分が時間外労働となるのかを見極めなければならないことの大変さを実感します。

 

 そこで出てくるのか(B)の管理モデルであり、本パンフレットでは、管理モデルを導入すれば、管理モデルのとおり運用されている限り、副業・兼業先での実労働時間の把握が不要となるものであることがわかります。ただし、②の合意書の様式例で明らかとなりましたが、そもそも管理モデルの導入は、副業・兼業を行う労働者を介して副業・兼業先に要請する(要請することを労働者が約束する)ものであり、副業・兼業先を含めた三者間合意をして確約するというものではないようです(三者間で合意できるのであればそれに越したことはないと思われますが、それは必須ではないようです。)。副業・兼業先がグループ会社等であればともかく、関係性が全く構築されていない企業間で、労働者を介した要請が果たして受け入れられるのか、その保障がない中で実務対応することの不安を感じます。

 
 また、管理モデルは、要は「労働基準法の最低限の義務を上回る対応も含めることで労働基準法違反を確実に回避する手法」ということのようであり、例えば、副業・兼業先では、実労働時間全体を常に時間外労働と捉えて割増賃金の対象とすべきとされているように読めます。そうすると、この管理モデルは、確かに、副業・兼業する労働者が元々所属していた企業(本業先)にとっては手続上の負担が軽くなるものなのかもしれませんが、それと引換えに、副業・兼業先の(経済的)負担は増える可能性があり、この理解が正しければ、結局のところ、副業・兼業先での管理モデルの受入れは消極的となるのではないか、ひいては、就労中の労働者を他社が受け入れようとする動きが阻害されることにならないか、疑問に感じるところです。

 

 いずれにしても、本パンフレットをもってもなお、労働時間の通算制や管理モデルの内容はわかりづらいと言わざるを得ません。特に管理モデルについては、メリットを強調するだけでなく、デメリットがあるのであればその内容についてもきちんと情報提供し、正しい理解を広めることをまずは優先してほしいと考えます。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

(2020年11月27日)

 

※副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説:こちら

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