「副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定」

 厚生労働省は、本年9月1日、副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定版を公表しました。同ガイドラインは、働き方改革実行計画(2017年3月28日働き方改革実現会議決定)に副業・兼業の普及促進が盛り込まれたことを受けて、2019年1月に策定されていたものです。
 

 今回の改定版では、企業は副業・兼業を認める方向とすべきとの原則的立場を引き継いだ上で、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務及び誠実義務など、労働契約上生じる労使双方の義務を具体的に挙げ、それを就業規則や副業・兼業の容認条件等にどのように落とし込むかについて一定の整理が示されています。
 

 また、労働時間の通算制(労働基準法38条1項)を前提に、労働基準法上の労働時間規制に関する条文(32条、36条)と通算制との関係性が明らかにされています。具体的には、雇用型の副業・兼業の場合、①32条の法定労働時間規制や36条6項の単月100時間未満・複数月平均80時間以内との上限は通算した時間について適用されること、②36協定で定めた限度時間は事業場ごとの実労働時間についての上限となること、などです。この通算制において、副業・兼業先での実労働時間の把握については、「労働者からの申告等」によって行うことがより明確化され、週や月の起算日が自社と副業・兼業先とにおいて相違している場合であっても、自社の起算日をベースとして通算すればよいとされています。
 

 さらに、簡便な労働時間管理の方法として「管理モデル」が提唱され、その大枠は、雇用型の副業・兼業を行う労働者を介して、副業・兼業の開始前に、全ての使用者(副業・兼業先については使用者となることを予定している者)が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となるよう各々の労働時間の上限を設定し、その範囲内で労働させることを合意するというものです。改定版では、この管理モデルを利用する場合の時間外労働の取扱いや割増賃金の支払について詳述されていますが、容易に理解するのは難しい内容といえます。
 

 厚生労働省は、ガイドラインのほかに、パンフレットやQ&Aも公表していますが、これらについてはまだ改定されていないようです。「管理モデル」のイメージや導入した場合の効果について理解するには、文章による説明だけでなく、図や具体例を用いるなどしてかみ砕いた説明が必要と思われることから、ガイドラインの改定版に対応したパンフレットやQ&Aが早期に公表されることが望まれます。
 

(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 
※副業・兼業の促進に関するガイドライン(改定版):こちら
※副業・兼業の促進に関するガイドライン新旧対照表(案)(本年8月27日開催労働政策審議会労働条件分科会配付資料):こちら

 

(2020年9月14日)

 
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