「公益通報者保護法の改正法の成立」

 公益通報者保護法の改正法(令和2年法律第51号、以下に挙げる条文は改正法による改正後のもの)が本年6月8日に参議院にて可決成立し、6月12日に公布されました。公布日から2年以内の政令で定める日に施行されます。
 改正内容は比較的多岐に及んでいます。

 
 まず、公益通報者として保護される者に、通報時点で従業員・派遣労働者等である者だけでなく、過去(通報の日前1年以内)に従業員・派遣労働者等であった者(退職者等)が加わりました(2条1項1~3号)。また、公益通報者保護法上の「役員」とは、「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法令の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く。)」であることが定義された上で(2条1項柱書)、役員自身も公益通報者となることを定める規定が新設されました(同項4号)。

 
 また、公益通報をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止がより強化され(1条)、退職者等に対する退職金の不支給や(5条1項)、役員に対する報酬の減額その他不利益な取扱い(解任を除く。)をも禁止する旨が明記されました(同条3項)。役員に関しては、公益通報をしたことを理由として解任された場合、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨の規定も新たに盛り込まれました(6条)。ただし、行政機関や報道機関等への通報に関しては、役員が自ら調査是正措置(善良な管理者と同一の注意をもって行う、通報対象事実の調査及びその是正のために必要な措置)をとることに努めることが前提となります(6条2号、3号)。

 
 次に、通報対象事実には、刑事罰の対象となる犯罪行為のみが含まれていましたが、公益通報者保護法違反を含め、刑事罰だけでなく行政罰(過料)の対象となるものにも拡大されました(2条3項)。

 
 以上のほか、事業者がとるべき措置として、公益通報対応業務従事者(公益通報を受け、その通報にかかる通報対象事実の調査をし、その是正に必要な措置をとる業務に従事する者)を定めるとともに(11条1項)、公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置(同条2項)が義務づけられることとなりました(ただし、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者は努力義務、同条3項)。これらに関しては、追って指針が定められる予定です(同条4項)。事業者がとるべき措置への違反に関しては、行政措置(報告の徴収、助言、指導、勧告)と(15条)、勧告に従わなかった場合の企業名公表が予定されています(16条)。さらに、罰則として、公益通報対応業務従事者(過去に公益通報対応業務従事者であった者を含む)が公益通報者を特定しうる情報に関する守秘義務(12条)に違反した場合には30万円以下の罰金刑に(21条)、事業者が行政からの報告の徴収に従わず、又は虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料に(22条)処する旨の条文も新たに加わりました。

 

(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 
※公益通報者保護法の令和2年改正について(消費者庁Webサイト):こちら
 

(2020年6月24日)

 
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