「心理的負荷による精神障害の認定基準の一部改正」

 心理的負荷による精神障害の労災請求は、これまで平成23年12月26日付「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(基発1226第1号、以下「認定基準」)に基づき業務上外が判断されていましたが、本年5月29日付基発0529第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準の改正について」により一部改正されました。

 
 この改正は、本年6月1日に施行された労働施策総合推進法の改正によりパワーハラスメントが法律上定義されたことを受けて、業務による心理的負荷評価表の「出来事の類型」に「⑤パワーハラスメント」を追加し、それに対応する「具体的出来事」を「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」とすることなどによって、パワーハラスメントに関する事案を認定基準上明確にし、労災請求の容易化・審理の迅速化を図ろうとするものです。改正後の認定基準は、本年6月1日以降の業務上外の判断において使用されます。

 
 従来、パワーハラスメントに関する事案は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」との具体的出来事の中で判断されていました。今回の改正は、これまで「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の中で取り扱っていた事案を、上司等によるパワーハラスメントと、同僚等によるいじめ等に分け、前者については上記のとおり「⑤パワーハラスメント」で、後者については、従来どおり「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」との具体的出来事(ただし、今回の改正により下線部分を追加)で取り扱うよう整理し直したものです。なお、改正後の認定基準における「パワーハラスメント」や「上司等」の定義は、労働施策総合推進法及び同法に基づく指針上の定義と同一です。

 
 今回の改正は、パワーハラスメントの法制化に関連する部分のみの変更となりました。厚生労働省では、今年度において「ストレス評価に関する調査研究」を約10年ぶりに実施することとし、その結果を踏まえて、来年度に心理的負荷による精神障害の認定基準全般の検討を行う予定としています。

 

(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 
※厚生労働省報道発表-令和2年5月29日「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」:こちら
 

(2020年6月11日)

 
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