「民法改正と労基法上の消滅時効-労政審による建議」

皆様、本年も本コラムをよろしくお願いいたします。
2020年最初のテーマは、昨年12月27日にようやく議論がまとまった労基法上の消滅時効についてです。労政審(労働政策審議会)労働条件分科会は、12月27日付で賃金等請求権の消滅時効の在り方について厚労相に建議を行いました。その内容は以下のとおりです。

賃金請求権 消滅時効期間は5年、消滅時効の起算点は、現行の労基法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点を維持し、これを労基法上明記する。
ただし、当分の間、記録の保存期間(労基法109条)に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図る。
退職金請求権 現行の消滅時効期間(5年)を維持。
年次有給休暇請求権 現行の消滅時効期間(2年)を維持。
災害補償請求権 現行の消滅時効期間(2年)を維持。
記録の保存 原則は5年とするが、消滅時効期間と同様、当分の間は3年とする。
付加金の請求期間 原則は5年とするが、消滅時効期間と同様、当分の間は3年とする。

 

今後、この建議の内容を踏まえて労基法の改正法案が作成・審議され、改正民法の施行日と同じく、令和2年4月1日に施行される予定です。
経過措置に関しては、建議では、施行日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権から改正法を適用すべきとされています。改正民法(債権法)では、施行日前に締結された契約に基づく債権には改正前の法律を適用するものとしており、これとは異なる取扱いとなる点に注意が必要です。
また、「改正法の施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講じる」との内容の検討規定も設けられる予定です。よって、「当分の間」とされている部分は5年後に見直される(原則の適用に変わる)可能性があります。

(第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2020年1月14日 更新)

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