「36協定届(様式第9号の2)の記載例の変更」

厚労省は、先月、特別条項に関する36協定届(様式第9号の2)の記載例を以下のとおり変更しました。
これに伴い、厚労省作成のパンフレット「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」掲載の記載例も変更されました。

臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合 業務の種類 労働者数 1箇月  1年
限度時間を超えて労働させることができる回数 法定労働時間を超える時間数と休日労働の時間数を合算した時間数 所定労働時間を超える時間数と休日労働の時間数を合算した時間数(任意) 法定労働時間を超える時間数 所定労働時間を超える時間数(任意)
変更前 変更後  変更前  変更後  変更前  変更後  変更前  変更後  変更前  変更後  変更前  変更後
突発的な仕様変更 設計  10人  10人  6回  4回  90時間  60時間  100時間  70時間  700時間  550時間  820時間  670時間
製品トラブル・大規模なクレームへの対応 検査  20人  10人  6回  3回  90時間  60時間  100時間  70時間  600時間  500時間  720時間  620時間
機械トラブルへの対応 機械組立  10人  20人  4回  3回  80時間  55時間  90時間 65時間  500時間 450時間  620時間  570時間

 

この変更は、特別条項適用時の上限時間が「90時間」などとなっていた点について、「全国過労死を考える家族の会」が、いわゆる過労死ライン(単月100時間、複数月平均80時間)ギリギリとなっていることを問題視して厚労相へ改善を申し入れたことに対応したものです。厚労省は「当初はわかりやすいよう法の上限に近い時間を記載したが、意見を受けて見直した」と説明しています。
確かに、わかりやすさという観点からは、変更前の記載例の方が望ましいといえます。例えば、記載例中、1箇月あたりの「法定労働時間を超える時間数と休日労働の時間数を合算した時間数」部分には、吹き出しで「なお、この時間数を満たしていても、2~6か月平均で月80時間を超えてはいけません。」との注意書きがありますが、変更後の上限時間は、特別条項を適用した場合でも最長60時間ですので、36協定届を守る限り、2~6か月平均で月80時間を超えることはあり得ず、「この時間数を満たしていても」という部分の趣旨が伝わりづらくなっています。新しい上限規制は、36協定による上限時間と、労基法36条6項が定める上限時間(単月100時間未満・2~6か月平均で月80時間以内)とが並列的な規制であり、36協定の時間数を守っていても労基法36条6項違反により違法となる場合があり得ることが、実務対応としては特に重要なポイントです。この点の正しい理解のためには、変更前の記載例の方が有意義であったといえるでしょう。
なお、厚労省作成のパンフレット「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」に掲載されているフレックスタイム制を採用する場合の36協定届の記載例は、現時点では変更されていません。

(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年9月11日 更新)

 

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