「個別労働紛争解決制度の施行状況・過労死等の労災補償状況」

厚労省は、先月下旬、平成30年度の「個別労働紛争解決制度の施行状況」(6月26日公表)と「過労死等の労災補償状況」(6月28日公表)をそれぞれ公表しました。
「個別労働紛争解決制度の施行状況」は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく①総合労働相談(労働局と労基署に設置された全国380か所の総合労働相談コーナーで相談受付)、②労働局長による助言・指導(①の相談者の申出による)、及び、③労働局に設置された紛争調整委員会によるあっせん(①の相談者の申請又は②を経た申請による)、の3つの実施状況を示すものです。平成30年度は、①総合労働相談件数、②助言・指導申出件数、③あっせんの申請件数のいずれも、前年度より増加し(①1.2%増、②7.1%増、③3.6%増)、高止まりが続いていることがわかりました。また、①②③の全てについて、最も多い相談項目は「いじめ・嫌がらせ」であり、過去最高の件数を記録したことがわかりました。そして、①②で「いじめ・嫌がらせ」に次いで多かったのは、「自己都合退職」に関する相談でした(なお、③は、「いじめ・嫌がらせ」の次は「解雇」でした)。「自己都合退職」は、10年前には主要相談項目の中で最少でしたので、人手不足が深刻な中、「退職させてもらえない」といった相談が近年急増しているものと推測されます。
「過労死等の労災補償状況」は、労働者が発症した脳・心臓疾患や精神障害について、平成30年度における労災請求件数と、同年度において業務上疾病と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数(平成30年度以前に請求があったものを含む)等を明らかにしたものです。請求件数は、脳・心臓疾患が877件(前年度比37件増)、精神障害が1820件(前年度比88件増)でした。これに対し、支給決定件数は、脳・心臓疾患が238件(前年度比15件減、死亡82件)、精神障害が465件(前年度比41件減、自殺・自殺未遂76件)でした。精神障害の出来事別支給決定件数は、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が69件で最も多くなりました。また、「セクシュアルハラスメントを受けた」の支給決定件数は33件(全員女性)となっています。
上記いずれの公表結果からも、ハラスメント対策の重要性が読み取れます。

(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年7月29日 更新)

 

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