「パワハラ防止措置の義務化」

パワハラ防止措置義務化を含む労働施策総合推進法の改正法(改正法の名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」)が2019年5月29日、参議院本会議での可決により成立し、6月5日、公布されました。
パワハラ防止措置義務は、改正後の労働施策総合推進法30条の2に規定化され、同条1項で「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定められました。また、同条2項は「事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」として不利益取扱いの禁止を定めています。
「雇用管理上必要な措置」の内容は、今後、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)での審議を経て制定される指針により具体化されます。
改正法の施行日は、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日です。ただし、中小事業主に関しては経過措置が設けられ、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、パワハラ防止措置は努力義務に留まります(ただし、不利益取扱いの禁止には、このような経過措置はありません)。
今後は、指針の制定に向けた準備が進められていきます。特に、衆議院の附帯決議では、パワーハラスメントの包括的な行為類型や「自社の労働者が取引先、顧客等の第三者から受けたハラスメント及び自社の労働者が取引先に対して行ったハラスメントも雇用管理上の配慮が求められること」などを指針に明記すべきことや、「パワーハラスメントの防止措置の周知に当たっては、同僚や部下からのハラスメント行為も対象であることについて理解促進を図ること」などへの言及があり、これらがどのような形で指針に盛り込まれるか、労働政策審議会での議論に注目です。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年6月10日 更新)

 

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