「コンビニオーナーの労組法上の労働者性」

中央労働委員会(以下「中労委」)は、2019年3月15日、株式会社ファミリーマートとの間でフランチャイズ契約を締結した加盟者(以下「コンビニオーナー」又は「オーナー」)は、労働組合法(以下「労組法」)上の労働者に当たらないと判断したことを公表しました。また、同日、株式会社セブン-イレブン・ジャパンに関しても、同内容の公表をしました(いずれも中労委命令は同年2月6日付、以下両社合わせて「会社」)。これは、コンビニオーナーに関する初めての中労委判断であり、また、前審(東京都及び岡山県の各労働委員会)は、いずれも労働者と認める判断を示していたため、それらを覆した点で注目されます。
労組法は、労働者が団結して組織した労働組合が申し入れた団体交渉を使用者が正当な理由なく拒絶することを禁じています。もっとも、これは、あくまで労働組合が「労働者」によって組織されていることが前提であるため、コンビニオーナーが組織した労働組合からの団体交渉を会社が拒否したことの違法性判断にあたり、コンビニオーナーが「労働者」に該当するのかどうかが争点となりました。
労組法上の労働者は、労働基準法上の労働者よりも広い概念とされており、過去にも、バイシクルメッセンジャーやNHKの受信料徴収人など、労働基準法上は労働者ではないが、労組法上は労働者であると認められた例があります。もっとも、いずれにしても、労働者というためには、少なくとも、労働力を提供し、それに対する報酬を得ていると評価できることが必要であり、顕著な事業者性を有する場合、労働者性は否定されます。
前審は、コンビニオーナーらの多くがコンビニの店長として稼働している実態を重視し、年中無休・24時間営業の義務づけ等、会社の指揮監督に応じて労務を提供していると評価しましたが、中労委は、必ずしもオーナー全員が店長となっているわけではなく、店長となるかどうかはオーナーの判断に委ねられていること、また、オーナーは店舗スタッフを採用するなど他人の労働力等を活用し自らリスクを引き受けて事業を行っている点で顕著な事業者性が認められる等として、会社に対してオーナーが自らの労働力を提供し、その労務提供に対する対価を得ているとはいえないとしました。
ただし、中労委は、「会社との交渉力格差が存在することは否定できないことに鑑みると、その格差に基づいて生じる問題については、労組法上の団体交渉という法的な位置づけを持たないものであっても、適切な問題解決の仕組みの構築やそれに向けた当事者の取組み、とりわけ、会社側における配慮が望まれる」と付言しています。
(五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子)

 

(2019年5月7日 更新)

 

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