2024年の立法動向と今後の展望
2024年も重要な法改正が相次ぎました。
まず、育児介護休業法の改正法が5月に成立しました。育児・介護ともに多岐にわたる改正がされ、両立支援制度・措置内容の拡充だけでなく、両立支援に向けた制度・措置についての情報周知や意向確認の強化もなされています。施行は、育児関係の改正は2025年4月と10月の2段階、介護関係の改正は全て2025年4月です。
また、これに一部関連するものとして、雇用保険法の改正法も5月に成立し、出生後休業支援給付と育児時短就業給付が創設されました。育児休業や時短勤務による収入源を一層カバーし「共働き・共育て」を推進しようとするもので、出生後休業支援給付は、子の出生直後の一定期間以内に夫婦で育児休業を取得する場合に最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付と合わせて給付率80%(手取り10割相当)へ引き上げることとするものです(2025年4月1日施行)。このほか、雇用保険法の改正法には、被保険者が週20時間以上から週10時間以上に拡大されるなど改正点も含まれています(適用拡大は2028年10月1日施行)。
11月には、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス新法)が施行されました。これに伴い、11月から、フリーランス(特定受託事業に従事する者)も労災保険に特別加入できるようになりました。また、厚生労働省は、施行に先立つ10月、「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を労働基準監督署に設置し、「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集」も公表しました。
2025年の立法に向けた動きとしては、まず、12月24日に概ね案がまとまった労働基準関係法制研究会の報告書と、労働政策審議会による12月26日付け建議「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」が特に気になるところです。
労働基準関係法制研究会の報告書(案)は、労働基準法を中心とした労働基準関係法制全般について時代に即した見直しを図ろうとするもので、労働基準法の適用に関するものとしては、「労働者」概念や、事業所単位とするのか企業単位とするのか、「過半数代表者」等の在り方について議論の状況が記されています。また、労働時間法制や割増賃金についても様々な議論がされ、その中でも特に、副業・兼業に関し「労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金の支払いについては、通算を要しないよう、制度改正に取り組むことが考えられる。」と明記された点は大きな前進と思われます。
また、12月26日付けの上記建議は、女性活躍推進法に基づく情報公表義務の拡大(常時雇用労働者数101人以上300人以下の企業についても、男女間賃金差異や女性管理職比率の情報公表を義務とすること等)や、カスタマーハラスメント対策・就活等セクシュアルハラスメント対策の強化(事業主の雇用管理上の措置義務化)等を行うものです。
このほか、12月25日に規制改革推進会議(内閣府)が公表した「規制改革推進に関する中間答申」では、「時間単位年休の上限を、例えば年次有給休暇の付与日数の50%程度に緩和することなどの見直しの要否も含め、労働政策審議会にて検討を開始し結論を得る。」(2025年度結論)とされており、これについても今後、労働基準法改正に向けた議論が進みそうです。
これらの動きについても引き続き本コラムで取り上げていきます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
参考資料~
※育児介護休業法の改正に関する厚生労働省のWebサイト:こちら
※厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」:こちら
※厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまへ」(労災保険の特別加入について):こちら
※厚生労働省労働基準局「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集」(令和6(2024)年10月時点):こちら
※厚生労働省報道発表資料「『労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口』を労働基準監督署に設置します」:こちら
※労働基準関係法制研究会報告書(案)(12月24日公表):こちら
※厚生労働省「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について(概要)」:こちら
※規制改革推進会議「規制改革推進に関する中間答申」(令和6(2024)年12月25日):こちら
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