「今年の立法動向を振り返る」

 数年前の、政府主導の「働き方改革」による怒濤の法令改正がようやく一段落し、そして、一段落したことに慣れてきたような気がしていたところでしたが、2023年はまた重要な法令の成立・改正があり、さらに、2024年以降の法令改正に向けた動きもありました。

 
 2023年に成立した法律に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス新法)があります。4月28日に可決成立し、5月12日に公布されました。公布後1年6か月内の政令で定める日に施行される予定で、施行日はまだ決まっていませんが、2024年秋頃に施行予定とされており、2024年にかけて様々な動きが予想されます。現在は、厚生労働省内では「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会※1」が、公正取引委員会内では「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会※2」が開催され、政令等の検討が進められています。また、労災保険へのフリーランスの特別加入に向けた労災保険法施行規則等の改正についても手続きが進められており、2023年12月22日に改正案について労働政策審議会の答申がありました※3。

 
 次に、2023年に改正されたものとして、労働条件(募集条件)明示等に関する労働基準法施行規則や職業安定法施行規則があり、2024年4月1日に施行されます。昨今の法令改正は、有期やパート等の一部の労働者が対象となるものが多かったですが、この改正は雇用形態を問わず全ての労働者を対象とするものを含みますので、3月までに改正内容をしっかりと確認しておく必要があります。(改正内容について詳しくは 前回のコラム をご覧ください。)
※当コラム担当の町田弁護士による講演を開催いたします。以下ご確認ください

 
 また、裁量労働制に関しても労働基準法施行規則等の改正があり、専門業務型の対象業務にM&Aアドバイザリー業務が加わるとともに、主に労働者の同意に関して専門業務型の労使協定事項、企画業務型の労使委員会の決議事項が追加されました。これらの改正は2024年4月1日に施行され、同日を有効期間に含む労使協定・労使委員会の決議は、改正内容に適合していない場合には同日以降は無効となります。そのため、新たに裁量労働制を導入する場合だけでなく、既に導入している場合にも2024年3月31日までに改正対応が必要となりますので、ご注意ください。詳しくは後掲の厚生労働省リーフレット※4をご参照ください。

 
 2024年は、まずは育児介護休業法の改正が行われることになりそうです。労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)は2023年12月26日、建議「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」を公表しました※5。詳しくはまたこのコラムでご紹介していきます。

 
 本年も本コラムをご覧いただき、誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 
 

※1 厚生労働省「特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会」:こちら

 
※2 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」:こちら

 
※3 第110回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料(労災保険へのフリーランスの特別加入関係):こちら

 
※4 厚生労働省リーフレット「事業主の皆さまへ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」:こちら

 
※5 厚生労働省労働政策審議会建議「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」の公表:こちら

 

(2023年12月28日)

 

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