労働判例ジャーナル104号(2020年・11月)

■注目判例

労契法旧20条に関する最高裁5判決

労契法旧20条に関する最高裁5判決

■ポイント

 本年10月13日および15日に最高裁は,労契法旧20条をめぐって5つの判決を下した。これらの最判は,社会的にも大きく取り上げられ,高い関心が示されている。もっとも,各種の賃金・労働条件に関する最判の結論だけに関心が集まり,最判の示した労契法旧20条に関する解釈が十分に正確には伝わっていないようにも思われる。これらの最判においては,日本の多くの企業において,適用対象が正社員に限定されている賞与,退職金および扶養手当という労働条件が争点となっただけに,その結論が注目されるのも無理からぬところがある。
 しかし,最判は,いずれの労働条件についても,労契法旧20条の不合理性審査の対象となることを明示していることを忘れてはならない。重要なことは,どのような判断枠組みを採用し,また,具体的な事実にどのような規範的評価を与えて,結論に至っているかである。この点では,これら最判は,労契法旧20条に即して,争点とされた労働条件の趣旨・目的を明らかし,有期契約労働者(有期雇用労働者)と無期契約労働者の労働条件の相違について,①職務内容,②職務内容および配置の変更の範囲(以下,「変更の範囲」とする)および③その他の事情を踏まえて,不合理性を判断するという枠組みを採用していることを確認しておくことが重要である。

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目次

◆ 正社員と非正社員との待遇の相違と労契法旧20条

労契法旧20条に関する最高裁5判決

最高裁(令和2年10月13日・15日)判決

◆ 退職金に関する(旧)労契法20条の不合理該当性

メトロコマース事件

最高裁第三小法廷(令和2年10月13日)判決

◆ 賞与及び私傷病による欠勤の有休補償の不合理該当性

大学法人大阪医科薬科事件

最高裁第三小法廷(令和2年10月13日)判決

◆ 夏期休暇及び冬期休暇の不合理該当性

日本郵便(佐賀)事件

最高裁第一小法廷(令和2年10月15日)判決

◆ 年末年始勤務手当,祝日給及び扶養手当の不合理該当性

日本郵便(大阪)事件

最高裁第一小法廷(令和2年10月15日判決)判決

◆ 年末年始勤務手当,病気休暇等の不合理該当性

日本郵便(東京)事件

大阪地裁(令和2年5月28日)判決

◆ 管理監督者該当性と未払割増賃金等支払請求

マツモト事件

東京地裁(令和2年6月3日)判決

◆ 代表者に対する暴行等を理由とする解雇の有効性

モロカワ事件

東京地裁(令和2年6月3日)判決

◆ 暴行・隠ぺい工作等を理由とする懲戒(停職)処分の有効性

氷見市・氷見市消防長事件

富山地裁(令和2年5月27日)判決

◆ 自動車接触事故等の不申告を理由とする雇止めの有効性

日の丸交通足立事件

東京地裁(令和2年5月22日)判決

◆ 能力欠如を理由とする試用期間延長後の解雇の有効性

AIG損害保険事件

東京地裁(令和2年3月24日)判決

◆ 退職の実質的解雇該当性

ドリームスタイラー事件

東京地裁(令和2年3月23日)判決

◆ 業務移管を理由とする雇止めの有効性

バンダイ事件

東京地裁(令和2年3月6日)判決

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