労働判例ジャーナル88号(2019年・7月)

■注目判例

アルバイト職員の勤務地限定の合意

ジャパンレンタカー事件

■ポイント

 本件はアルバイト職員の勤務地を限定する合意があったとして,当該職員に対する配転命令が無効とされた珍しい事案である。そもそもアルバイト職員に対して勤務場所を変更する業務命令が出されること自体が一般的とは言えないが,勤務地限定社員のように明示的な場合以外に勤務地限定が認められることはあまりない。しかし,本件においては,就業規則に配置転換を命ずる旨の規定があり,また,勤務地を特定する明示の明確な合意はないという中で勤務地限定の合意が認められたことに特徴がある。
 配転について定着した判例法理は,いわゆる無限定正社員を前提として生み出されたものであり,「働き方改革」の中ではその妥当性自体が検討課題とされている。このような法理をアルバイト職員に適用されると考えた会社の主張には無理があり,通常,本件のようなアルバイト職員に対する配転は予定されていないであろう。その意味では,本判決の結論は当然とも言えるが,この会社の人事配置の実態から勤務地限定の合意を導き出したこと注目してよいであろう。

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目次

◆ アルバイト職員の勤務地限定の合意

ジャパンレンタカー事件

津地裁(平成31年4月12日)判決

◆ 亡歯科技工士の自殺に対する安全配慮義務違反の成否

損害賠償等請求事件

福岡地裁(平成31年4月16日)判決

◆ 同意のない賃金減額とパワハラに基づく損害賠償請求

キムラフーズ事件

福岡地裁(平成31年4月15日)判決

◆ 一方的な賃金減額とうつ病発症の業務起因性

国・高知労基署長(うつ病発症)事件

高知地裁(平成31年4月12日)判決

◆ 119番通報に対する不適切対応と停職処分の可否

東備消防組合事件

岡山地裁(平成31年3月27日)判決

◆ 通勤手当不正受給を理由とする懲戒解雇無効確認等請求

学校法人明海大学事件

東京地裁立川支部(平成31年3月27日)判決

◆ 勤務中の事故によるうつ病の公務災害該当性の有無

公務外災害認定処分取消請求事件

那覇地裁(平成31年3月26日)判決

◆ 労働時間の裁量と管理監督者該当性

日産自動車事件

横浜地裁(平成31年3月26日)判決

◆ セクハラによる損害賠償請求の可否

藍住町事件

徳島地裁(平成31年3月18日)判決

◆ 職務専念義務違反の有無

東京都教育委員会事件

東京高裁(平成31年3月14日)判決

◆ 違法な配転命令及び降格処分に基づく慰謝料等請求

一般財団法人あんしん財団事件

東京高裁(平成31年3月14日)判決

◆ 小脳出血発症に基づく療養補償給付等不支給処分取消請求

国・大阪中央労基署長(小脳出血発症)事件

大阪地裁(平成31年3月11日)判決

◆ 代表取締役に対する暴行等と退職慰労金等支払請求

トーア事件

大阪地裁(平成31年3月7日)判決

◆ 有期雇用労働者の労働条件の不合理な差別に基づく損害賠償等請求

九水運輸商事事件

最高裁第二小法廷(平成31年3月6日)決定

◆ バス運転手の未払時間外割増賃金等支払請求

天理交通事件

大阪地裁(平成31年2月28日)判決

◆ 未払時間外割増賃金及び付加金等支払請求

ウェーブライン事件

大阪地裁(平成31年2月14日)判決

◆ 雇止め無効地位確認請求

地位確認等請求事件

東京高裁(平成31年2月13日)判決

◆ わいせつ行為を理由とする懲戒解雇の有効性

ヤマト運輸事件

大阪地裁(平成31年2月7日)判決

◆ ハラスメントを理由とする懲戒解雇の可否

学校法人アナン学園事件

大阪地裁(平成31年2月5日)判決

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