労働判例ジャーナル83号(2019年・2月)

■注目判例

選択要件のある定年後再雇用制度と高年法の継続雇用制度

京王電鉄・京王電鉄バス事件
東京地裁(平成30年9月20日)判決

■ポイント

  本件は,定年後に会社の再雇用制度のうち「継匠社員制度」による雇用継続を希望したが,それが認められず,別の再雇用社員制度での雇用契約書を取り交わしたバス運転手が「継匠社員」としての地位確認などをバス会社及びその親会社である電鉄会社に求めた事案である。このうち親会社に対する訴えは,確認の利益がないとして却下されている。
 本判決は,継続雇用制度の労働条件については,定年退職前と同一の職務内容としなければならないとは言えないとして,「再雇用社員制度」を継続雇用制度と判断した。しかし,継続雇用制度の業務内容も含めた労働条件があまりに低劣な場合には,高年法の趣旨に適う継続雇用の実質がないという判断も可能であり(トヨタ自動車ほか事件・名古屋高判平28・9・28参照),その点の検討が不十分という批判が予想されるなど,今後議論すべき論点が少なくない事例と言えよう。

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目次

◆ 選択要件のある定年後再雇用制度と高年法の継続雇用制度

京王電鉄・京王電鉄バス事件

東京地裁(平成30年9月20日)判決

◆ 技術実習生の未払賃金等支払請求

協同組合つばさ事件

東京地裁(平成30年11月9日)判決

◆ 高校の常勤講師の雇止め無効地位確認等請求

学校法人広島山陽学園事件

広島地裁(平成30年10月31日)判決

◆ 権利能力のない社団の元職員による雇止め無効地位確認等請求

高知県立大学後援会事件

高松高裁(平成30年10月31日)判決

◆ 医療法人に対する理学療法士としての地位確認等請求

医療法人はしもと事件

和歌山地裁(平成30年10月30日)判決

◆ 休職期間満了による解雇無効地位確認等請求

湯山製作所事件

大阪地裁(平成30年10月30日)判決

◆ 横領に基づく損害賠償等請求と懲戒解雇無効地位確認等請求

社会福祉法人なかま福祉会事件

大阪地裁(平成30年10月30日)判決

◆ 大学病院助教の出入り禁止命令に基づく損害賠償等請求

国立大学法人三重大学事件

名古屋高裁(平成30年10月25日)判決

◆ 医療法人に対する元受付兼カウンセラーの未払割増賃金等支払請求

医療法人聖美会事件

大阪地裁(平成30年10月25日)判決

◆ 女子生徒に対する不適切メール等を理由とする停職処分取消請求

東京都・東京都教育委員会事件

東京高裁(平成30年10月24日)判決

◆ パワハラによる精神障害発病に基づく療養補償給付不支給処分取消請求

国・伊賀労基署長事件

大阪地裁(平成30年10月24日)判決

◆ 業務能率不良等を理由とする解雇無効地位確認請求

アクセンチュア事件

東京地裁(平成30年9月27日)判決

◆ 能力不足等を理由とする解雇の有効性

アイドママーケティングコミュニケーション事件

東京地裁(平成30年9月27日)判決

◆ 長期欠勤を理由とする解雇無効地位確認等請求

計機健康保険組合事件

東京地裁(平成30年9月26日)判決

◆ トラック運転手の未払賃金等支払請求

大島産業事件

福岡地裁(平成30年9月14日)判決

◆ トラック運転手らの時間外割増賃金等支払請求

シンワ運輸東京事件

東京地裁(平成30年8月29日)判決

◆ 准教授の女子学生に対するLINEでのセクハラ発言の停職処分該当性

学校法人東京経済大学事件

東京地裁(平成30年8月8日)判決

◆ 固定給の合意と時間外割増賃金等支払請求

KUNEN事件

東京地裁(平成30年7月10日)判決

◆ 懲懲戒処分に続いて行われた解雇の有効性

公益社団法人日本助産師会事件

東京地裁(平成30年7月9日)判決

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