労働判例ジャーナル43号(2015年・10月)

■注目判例

労働契約法19条と学生アルバイトの雇止め

シャノアール(カフェ・ベローチェ)事件
東京地裁(平成27年7月31日)判決

■ポイント

 2012年の労働契約法改正は,それまでに確立していた有期労働契約の雇止めに関する判例法理を立法化するだけではなく(労働契約法19条),有期労働契約が更新されて5年を超えるときには,当該有期労働契約者に無期転換申込み権が発生し,この権利が行使されると,使用者がこれを承諾したとみなすという制度を創設した(同法18条)。いわゆる有期労働契約の無期転換制度である。
 このような状況の中で,コーヒーショップ・チェーン店を営む会社(以下,「会社」)の有期労働契約について,更新回数の制限が導入され,それに基づき雇止めされたアルバイト(以下,「本件アルバイト」)がこの雇止めを違法として,地位確認などを求めたのが本件である。
 しかし,本判決の論理は必ずしも明快ではない。本件アルバイトの有期労働契約は,仮に更新回数に上限規制がないとすれば,更新についての合理的な期待を否定するのは困難であると思われる。すなわち,本判決は,有期労働契約の更新回数の上限規制を導入することが,有期労働契約者である本件アルバイトの契約更新に対する合理的期待を排除するほどの経営上の必要性があることを示す必要があったのではないだろうか。いずれにしても,理論的にも,実務的にも,検討すべき課題を提示した判決といえよう。

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目次

【注目判例】

◆ 労働契約法19条と学生アルバイトの雇止め

シャノアール(カフェ・ベローチェ)事件

東京地裁(平成27年7月31日)判決

◆ 休職事由の消滅と地位確認等請求

日本電気事件

東京地裁(平成27年7月29日)判決

◆ 勤務態度不良等に基づく解雇無効地位確認等請求

モリソン・フォースター・アジア・サービス・LLP事件

東京地裁(平成27年7月22日)判決

◆バイクメッセンジャーらの地位確認等請求

ソクハイ事件

最高裁第三小法廷(平成27年7月21日)決定

◆協調性の乏しさ等を理由とする配転命令無効等確認請求

メルテック・ビジネス事件

東京地裁(平成27年7月17日)判決

◆懲戒解雇された元従業員による退職金減額部分支払請求

タキロン事件

東京地裁(平成27年7月17日)判決

◆ 日本郵便の期間雇用社員の雇止め無効等請求

日本郵便事件

東京地裁(平成27年7月17日)判決

◆就業規則不利益変更無効に基づく賃金差額分等支払請求

(共)高エネルギー加速器研究機構事件

水戸地裁土浦支部(平成27年7月17日)判決

◆タクシー乗務員の未払時間外割増賃金等支払請求

国際自動車事件

東京高裁(平成27年7月16日)判決

◆派遣先との黙示の労働契約の成立を前提とした地位確認等請求

日産自動車(アデコ)事件

東京地裁(平成27年7月15日)判決

◆退職意思表示の錯誤無効地位確認等請求

ピジョン事件

東京地裁(平成27年7月15日)判決

◆ 性同一性障害に基づく不利益に対する損害賠償等請求

浜名湖観光開発(浜名湖カントリークラブ)事件

東京高裁(平成27年7月1日)判決

◆ 塾講師による雇止め無効地位確認等請求

市進事件

東京地裁(平成27年6月30日)判決

◆ 係争中の訴訟に関するコメント提供行為と懲戒処分取消請求

日本弁護士連合会事件

東京高裁(平成27年6月18日)判決

◆ 大阪市長のした組合事務所使用不許可処分取消請求

大阪市(組合事務所使用不許可処分取消等請求)事件

大阪高裁(平成27年6月2日)判決

◆ 加入員減少に係る一括徴収金納入告知処分取消請求

全国光学工業厚生年金基金事件

東京地裁(平成27年4月28日)判決

◆ 大学教授に対するハラスメントによる懲戒処分

国立大学法人香川大学事件

高松高裁(平成27年3月25日)判決

◆ 入れ墨調査不回答に基づく懲戒処分取消請求

大阪市(入れ墨調査)事件

大阪地裁(平成27年2月16日)判決

◆ 虚血性心不全に基づく遺族補償一時金等請求

国・池袋労基署長(虚血性心不全)事件

大阪地裁(平成27年2月4日)判決

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