労働判例ジャーナル38号(2015年・5月)

■注目判例

職業安定法の手数料との差額分不当利得返還請求

宝木スタッフサービス(ホテルサンバレー)事件
宇都宮地裁大田原支部(平成27年1月21日)判決

■ポイント

 本件は,職業紹介を受けたホテルが職業紹介所に過払いの手数料の返還を求めたという事案である。従って,労働紛争ではないが,ホテルと職業紹介による従業員との間の雇用が期間の定めのない労働契約であるか,日々雇用であるかが事案の主要な争点であるので,ここに取り上げることとした。
 職業紹介の紹介手数料には厳しい制約があることもあって,有料職業紹介業者によって,雇用形態を日々雇用の形態として紹介し,毎日の労働契約の成立ごとに手数料を求人者から受取るというビジネスモデルを長年採用していることが少なくない。本事案も,まさにそのような仕組みがとられていた。ところが,本事案においては,最初の職業紹介時以外は,実態としてあっせん行為は行われておらず,ホテルも紹介された従業員について,シフト表を作成するなどおよそ日々雇用の労働関係ではあり得ない仕組みを採用しており,本判決は,これらの実態から,ホテルと職業紹介を受けた従業員との労働契約が期間の定めのないものであり,また,あっせん行為が日々行われたとは認められないとして,ホテルの不当利得返還請求を全面的に認容したものである。本判決の事実認定に即してみる限り,妥当な判断と評価できよう。
 本件のようなビジネスモデルを採用する有料職業紹介は,一部なお残存していると思われるので,社会的にも影響力のある判断が示されたといえよう。

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目次

【注目判例】

◆ 職業安定法の手数料との差額分不当利得返還請求

宝木スタッフサービス(ホテルサンバレー)事件

宇都宮地裁大田原支部(平成27年1月21日)判決

◆ 中退共と会社退職金との差額支払請求

藤森商会事件

東京地裁(平成27年1月30日)判決

◆ 定年後の継続雇用に対する合理的な期待

国際自動車事件

東京地裁(平成27年1月29日)判決

◆不正経理と退職強要の不法行為該当性

ファーマライズホールディングス事件

東京地裁(平成27年1月29日)判決

◆HIV感染情報の無断伝達等に基づく損害賠償請求

社会医療法人T会事件

福岡高裁(平成27年1月29日)判決

◆タクシー乗務員らの未払賃金支払請求

国際自動車事件

東京地裁(平成27年1月28日)判決

◆ タクシーチケット不正使用に基づく懲戒免職処分取消請求

鳥取県(懲戒免職処分取消等請求)事件

鳥取地裁(平成27年1月28日)判決

◆国立大学職員らの就業規則変更無効確認請求

国立大学法人福岡教育大学事件

福岡地裁(平成27年1月28日)判決

◆元客室乗務員の整理解雇無効地位確認等請求

日本航空(整理解雇)事件

大阪地裁(平成27年1月28日)判決

◆元自衛官による安全配慮義務に基づく損害賠償請求

国・法務大臣(損害賠償請求)事件

札幌地裁(平成27年1月27日)判決

◆旧就業規則に基づく未払退職金支払等請求

エムズコーポレーション事件

大阪地裁(平成27年1月27日)判決

◆ 居室に無断で入室し郵便物を持ち出す等の行為に対する損害賠償請求

アパマンショップリーシング事件

福岡簡裁(平成27年1月22日)判決

◆ 急性アルコール中毒死の業務起因性

国・品川労基署長(急性アルコール中毒死)事件

東京地裁(平成27年1月21日)判決

◆ 労使関係に関するアンケート実施に基づく損害賠償請求

大阪市(アンケート)事件

大阪地裁(平成27年1月21日)判決

◆ セラピストによる雇用契約上の権利を有する地位確認等請求

リバース東京事件

東京地裁(平成27年1月16日判決)

◆ 会社代表取締役のパワハラに基づく損害賠償請求

MRT事件

東京地裁(平成27年1月15日)判決

◆ 自殺した労働者の農協及び上司に対する損害賠償請求

クレイン農業協同組合事件

甲府地裁(平成27年1月13日)判決

◆ 上司のパワハラ行為に基づく慰謝料等請求

タカサゴスチール事件

大阪地裁(平成26年12月26日)判決

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