労働判例ジャーナル165号(2025年・12月)

■注目判例

事業場外労働のみなし制

協同組合グローブ(差戻し)事件

■ポイント

 本件は,外国人の技能実習に係る監理団体である協同組合グローブ(以下,「本件会社」という。)に指導員として雇用されていた従業員(以下,「本件従業員」という。)が,本件会社に対し,時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する賃金の支払を求めたものである。争点となったのは,本件従業員の業務に関わる労働時間が労基法38条の2第1項(本件規定)に規定する事業場外労働のみなし制に該当するかであった。
 本件従業員らの業務は,本件会社が労働時間を把握することは容易ではなかったが,本件の差戻し前の福岡高裁判決(令4・11・10LEXDB:25599166)は,本件従業員らが作成する業務日報によって本件会社が本件従業員らの労働時間を把握することが可能であるとして,本件業務が「労働時間を算定し難いとき」に該当しないとした。これに対して,上告審(最三小判令6・4・16LEXDB:25573468)は,福岡高裁判決が業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく,業務日報による報告のみを重視して,本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとしたことは本件規定の解釈適用に誤りがあるとして,この部分を福岡高裁に差戻した。
 差戻し審判決である本判決は,業務日報の正確性を詳細に検討し,これによって本件業務について本件会社が本件従業員らの労働時間を正確に把握することはできないとして,本件規定の適用を認める判断を示したものである。

年間購読料:52,800円(48,000円+税)※送料無料。

目次

◆ 事業場外労働のみなし制

協同組合グローブ(差戻し)事件

福岡高裁(令和7年8月28日)判決

◆ 懲戒処分及び解雇無効地位確認請求,未払賃金等支払請求が斥けられた例

パナソニックインフォメーションシステムズ事件

大阪地裁(令和7年9月26日)判決

◆ 酒気帯び運転を理由とする解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

静岡鐵工所事件

大阪地裁(令和7年9月26日)判決

◆ 弁護士の労働契約上の地位確認等請求を棄却した原判決が維持された例

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業事件

東京高裁(令和7年9月25日)判決

◆ 休職期間満了を理由とする退職扱い無効地位確認請求が認められた例

B WORLD PATENT&TRADEMARK事件

大阪地裁(令和7年9月18日)判決

◆ 原判決を変更し,事業場外みなし労働時間制の適用が否定された例

西原商会事件

福岡高裁宮崎支部(令和7年8月27日)判決

◆ 原判決を変更し,羽曳野市元職員の免職処分取消請求が斥けられた例

羽曳野市事件

大阪高裁(令和7年7月29日)判決

◆ 原判決を一部変更し,未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

日本硝子産業事件

東京高裁(令和7年7月2日)判決

◆ 退職として扱われた解雇無効未払賃金等支払請求が一部認められた例

CTW事件

東京地裁(令和7年6月30日)判決

◆ 未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

ヤマダ工業事件

東京地裁(令和7年6月27日)判決

◆ 業務命令違反等を理由とする懲戒解雇無効地位確認等請求が認められた例

学校法人新宿学園事件

東京地裁(令和7年6月25日)判決

◆ 未払割増賃金等支払請求が一部認められ(本訴),損害賠償等請求が斥けられた(反訴)例

MINAGAWASG事件

東京地裁(令和7年6月25日)判決

◆ ゴルフ場送迎ドライバーの未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

ジャパンゴルフマネージメント事件

東京地裁(令和7年6月24日)判決

◆ 定年後再雇用による地位確認等請求が認められた例

森ビルゴルフリゾート事件

東京地裁(令和7年5月30日)判決

◆ 労働基準法91条の制限超過分につき,減給処分無効確認請求が一部認められた例

一般財団法人NHK財団事件

東京地裁(令和7年5月29日)判決

◆ 非違行為を理由とする懲戒解雇無効退職手当等支払請求が斥けられた例

日本郵便事件

東京地裁(令和7年5月23日)判決

◆ 振動病発症に基づく損害賠償等請求が一部認められた例

兵庫県公立大学法人事件

神戸地裁姫路支部(令和7年1月23日)判決

◆ 不合理な待遇格差に基づく損害賠償等請求を棄却した原判決が維持された例

日本郵便事件

東京高裁(令和6年12月12日)判決

一覧に戻る

年間購読料:52,800円(48,000円+税)※送料無料。