労働判例ジャーナル164号(2025年・11月)

■注目判例
公務員の退職手当全部不支給処分の有効性
京都市交通局職員事件
■ポイント
本件は,京都市が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していた職員(本件職員)が,運賃の着服等の非違行為(本件非違行為)を理由に懲戒免職処分を受けたことに伴い,退職手当管理者から,京都市交通局職員退職手当支給規程に定める規定(本件規定)により,退職手当の全部不支給処分(本件退職手当不支給処分)を受けたため,京都市を相手に,上記各処分の取消しを求めた事案である。
本判決は,本件非違行為が重大であり,市が経営する自動車運送事業に対する信頼を大きく損なうものであるので,退職手当全部不支給処分は,退職手当管理者による裁量権の濫用にはあたらないとした。
本判決は,引用している宮城県・宮城県教委事件最高裁判決(最三小判令5・6・27 LEXDB/25572914)以降の懲戒免職処分に伴う退職手当全部不支給処分について,退職手当管理者の裁量権を広く認めて有効とする流れに従ったものであり,判例法理として定着してきていると言える。しかしながら,このような法理は,退職手当には賃金の後払い的性質を有することに対する考慮が不十分ではないかとの批判が絶えないところである。
| 年間購読料:52,800円(48,000円+税)※送料無料。 |
目次
◆ 公務員の退職手当全部不支給処分の有効性
京都市交通局職員事件
最高裁第一小法廷(令和7年4月17日)判決
◆ 非違行為を理由とする懲戒解雇無効地位確認請求が認められた例
社会福祉法人恵山恵愛会事件
函館地裁(令和7年8月8日)判決
◆ 学生に対するハラスメント行為に基づくけん責処分無効確認等請求が斥けられた例
国立大学法人神戸大学事件
大阪地裁(令和7年7月31日)判決
◆ 大学教員の職務懈怠等を理由とする降格処分無効確認等請求が認められた例
学校法人至学館事件
名古屋地裁(令和7年7月18日)判決
◆ パワハラ行為者に対する求償金支払請求が一部(5割)認められた例
上益城消防組合事件
熊本地裁(令和7年7月17日)判決
◆ クレジットカード利用に基づく損害賠償等請求が斥けられた例
粂川工業事件
東京地裁(令和7年7月15日)判決
◆ 未払割増賃金等支払請求が一部認められた例
ヤマダ工業事件
東京地裁(令和7年6月27日)判決
◆ キャバクラ店元キャストの違法控除に基づく不当利得返還請求が一部認められた例
in good faithほか1社事件
東京地裁(令和7年6月25日)判決
◆ 有期雇用契約期間中の解雇無効未払賃金等支払請求が認められた例
一般社団法人大地のめぐみ事件
大阪地裁(令和7年6月20日)判決
◆ 未払賃金等の支払が一部認められ(本訴)損害賠償等請求が一部認められた(反訴)例
ZENウェルネス事件
東京地裁(令和7年6月18日)判決
◆ 試用期間中の解雇は無効であるとして,地位確認請求が認められた例
b事務所事件
東京地裁(令和7年6月13日)判決
◆ パワハラ行為を理由とする懲戒処分無効確認請求及び損害賠償等請求が斥けられた例
一般財団法人航空保安協会事件
東京地裁(令和7年6月11日)判決
◆ 自死した亡警部補の相続人らの長崎県に対する損害賠償等請求が一部認められた例
長崎県事件
長崎地裁(令和7年6月10日)判決
◆ 会社の就労拒否に基づく未払賃金等支払請求が一部認められた例
未来創建事件
東京地裁(令和7年6月6日)判決
◆ 労働契約は合意解約によって終了しているとして,地位確認等請求が斥けられた例
楽天モバイル事件
東京地裁(令和7年6月5日)判決
◆ 労働者の賃金減額分等支払請求(本訴),会社の立替金支払請求(反訴)が認められた例
フォーラムエイト事件
東京地裁(令和7年6月5日)判決
◆ 転職した元従業員に対する損害賠償等請求が斥けられた例
ビットウェア事件
東京地裁(令和7年5月30日)判決
| 年間購読料:52,800円(48,000円+税)※送料無料。 |