労働判例ジャーナル161号(2025年・8月)

■注目判例

定年前に退職する必要のある継続雇用制度

成田国際空港事件

■ポイント

 本件は,継続雇用制度の適法性が争点である。本件の会社が設けた継続雇用制度(本件再雇用制度)は,その利用を希望する従業員が定年前の58歳で退職することが必要である。そして,本件再雇用制度を利用しないまま60歳に達した者は定年退職することとなる。したがって,本件再雇用制度は,従業員が再雇用制度を利用するか,利用せずに60歳で定年退職するかの選択を迫られるという独特の仕組みである。60歳の定年後に65歳までの継続雇用制度があるのが一般的だからである。
 本判決は,高年法の継続雇用制度の具体的な内容については,65歳までの安定した雇用の確保が目的であり,必ずしも定年退職後に引き続いて雇用される制度としなければならないといえないとの規範を立てて,本件再雇用制度を適法とした。この規範から,本件再雇用制度が実質的な58歳定年制とはいえず,また,本件再雇用制度に伴う労働条件の引き下げも適法とした。
 65歳から70歳までの高年齢者就労確保措置が事業主の努力義務とされたことを踏まえても,本判決のように単に雇用確保だけが継続雇用制度の目的であるとの解釈は適当でないといえよう。

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目次

◆ 定年前に退職する必要のある継続雇用制度

成田国際空港事件

東京地裁(令和7年3月27日)判決

◆ 雇用契約が成立していたとして,未払賃金等支払請求が一部認められた例

MAGUMO事件

東京地裁(令和7年3月31日)判決

◆ 賃金の供託は有効であるとして,未払賃金等支払請求が斥けられた例

タイミー事件

東京地裁(令和7年3月27日)判決

◆ トラック運転手の未払割増賃金等支払が一部認められた例

東輪ケミカル事件

福岡地裁小倉支部(令和7年3月27日)判決

◆ 聴覚障害を有する従業員の損害賠償等請求が斥けられた例

三菱UFJ銀行事件

大阪地裁(令和7年3月26日)判決

◆ 法内残業についての未払賃金等支払請求が一部認められた例

学校法人東京国際フランス学園事件

東京地裁(令和7年3月25日)判決

◆ 原判決を取り消し職務外非行を理由とする懲戒解雇無効地位確認請求が斥けられた例

日本郵便事件

名古屋高裁(令和7年3月25日)判決

◆ 医師は管理監督者に該当しないとして未払割増賃金等支払請求が一部認められた例

医療法人もみじの手事件

大阪地裁(令和7年3月24日)判決

◆ 降格は無効であるとして,未払賃金等相当額の損害賠償等請求が一部認められた例

ジェットスター・ジャパン事件

東京地裁(令和7年3月21日)判決

◆ 降格処分無効差額賃金等支払請求(本訴),損害賠償等請求(反訴)が斥けられた例

大東建託事件

東京地裁(令和7年3月21日)判決

◆ 休職満了を理由とする解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

マックス事件

大阪地裁(令和7年3月13日)判決

◆ 雇止め無効地位確認等請求が斥けられた例

千歳コーポレーション事件

大阪地裁(令和7年3月7日)判決

◆ 地位確認請求及び損害賠償等請求が斥けられた例

フタガミ事件

高知地裁(令和7年2月28日)判決

◆ 看護師の違法解雇又は違法契約解除に基づく損害賠償等請求が斥けられた例

茨城県事件

水戸地裁(令和7年2月21日)判決

◆ 無免許運転での物損事故を理由とする懲戒処分取消請求が斥けられた例

球磨郡公立多良木病院企業団事件

熊本地裁(令和7年2月19日)判決

◆ 違法査定に基づく差額賃金等支払請求が一部認められた例

楽天グループ事件

東京地裁(令和7年2月17日)判決

◆ 業務命令違反等を理由とする解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

徳洲会事件

東京地裁(令和7年2月7日)判決

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