従業員の心身の健康の確保に向けて
今回のコラムでは、従業員の心身の健康に関するものとして、本年8月に厚生労働省が公表した調査結果と検討会報告書をご紹介します。
まず、8月7日、令和7(2025)年「労働安全衛生調査(実態調査)」の結果が公表されました。労働安全衛生調査は、労働災害防止計画の重点施策を策定するための基礎資料として、労働安全衛生行政運営の推進のため厚生労働省が毎年、事業所及び個人に対し実施しているもので、令和7年は、有効回答を得た8054事業所・8393人の労働者の結果について集計・公表されました。
事業所調査の令和7年の調査事項は、①メンタルヘルス対策(メンタルヘルス不調による休業者・退職者の状況、ストレスチェック結果の活用など)、②産業保健、③労働災害防止対策(転倒防止対策、雇入れ時教育、高年齢労働者・外国人労働者に対する対策など)、④業種別労働災害防止対策、⑤化学物質のばく露防止対策で、個人調査の調査事項は、⑥仕事や職業生活における不安やストレス、⑦長時間労働でした。
調査結果の中で特に注目されるのは⑥で、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある労働者の割合が、67.5%にも及んでいることです(前年2026年は68.3%)。年齢別では、20代が最も多く72.0%、続いて多いのは40代の71.5%となっています。強い不安等の主なもの(3つまで回答)は、全合計で多い順に、仕事の量が39.5%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む)が32.9%、仕事の質が30.7%となっており、就業形態別(正社員・契約社員・パートタイム労働者・派遣労働者)の強い不安等の要因についても示されています。他方、全体で94.8%(前年2026年は94.6%)の労働者が、仕事や職業生活に関するストレスについて相談できる人がいると回答しており(複数回答)、相談相手は、全合計で「家族・友人」が7割強、「上司」が6割強となっています。
次に、8月21日、厚生労働省は「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」の報告書を公表しました。この報告書では主に、労働安全衛生法第69条(健康教育等)第1項に基づく事業者の措置義務(努力義務)の履行について定める「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)の改正に関する検討結果が示されています。改正の方向性としては、疾病の発症予防(一次予防)だけでなく、疾病の早期発見や早期治療(二次予防)に関する推進の取組を推進しようとするもので、二次予防の対象疾病として、がん、女性特有の健康課題(月経関係、更年期障害等)、歯科疾患、骨粗鬆症、眼科疾患といった健康課題を含むものとしています。また、報告書の中の、「業務起因性が必ずしも認められない疾病の二次予防については、必ずしも事業者のみが推進の責務を負うものではないが、労働者の健康への投資が経営にも資するとの理解の下、各事業場の実情に応じて創意工夫して進めていくことが適当」との指摘も重要と思います。
現在、多くの企業が人手不足に直面し、また、長時間労働の是正やワークライフバランスへの配慮も求められる中、従業員一人一人が心身ともに元気に能力を発揮し続けられるようにすることの重要性は高まるばかりです。「健康経営」という用語は既に十分広まっているようにも思いますが、その実現に向けて、日頃の職場環境整備も含め不断の努力が必要だと感じます。
~参考資料~
・厚生労働省Webサイト「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」:こちら
・厚生労働省Webサイト「『事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会』の報告書を公表します」:こちら
・厚生労働省Webサイト「『職場の健康診断実施強化月間』(9月)について」:こちら