障害者雇用に関する近時の動き
民間企業における障害者雇用の法定雇用率は、段階的引上げにより、本年7月1日、2.5%から2.7%に上がります。また、対象事業主の範囲についても同日以降、常時雇用労働者数40.0人以上の企業から37.5人以上の企業に拡大されます。
このような状況の中、厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会が本年4月20日に開催され(第137回)、今後、関係団体からのヒアリングを経て、本年6月以降、精神・発達障害者の雇用率算定の在り方、障害者雇用の「質」の向上、いわゆる「障害者雇用ビジネス」への対応、手帳を所持しない難病患者の位置づけ等について議論を進めていくことなどが検討されました。
これに先立ち、本年2月6日には「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告書が公表されています(研究会は2024年12月3日から2026年1月30日まで計13回開催)。上記分科会も、この報告書を前提とするものです。
この報告書は、研究会での議論を「障害者雇用の『質』について」と「障害者雇用率制度等の在り方について」の2項目に整理しています。
まず、「障害者雇用の『質』について」では、雇用される障害者の数は各種取組により増えているものの、障害者の戦力化や社内の中心的業務への貢献、多様な業務・役職を経験する機会等は不足しているとの問題意識の下、障害者雇用の「質」として重視すべき中心的な要素を示すガイドライン等の創設(その法令上の根拠も規定)、障害者雇用状況報告(6.1報告)に「質」に関する項目の追加、「質」を高める取組促進の観点から大企業を含む全ての企業を新たに認定制度の対象とすること、などの方向性が示されました。また、「質」との関係で、いわゆる「障害者雇用ビジネス」(主たる労働者の就業場所とは異なる第三者が提供する就業場所において障害者を勤務させている等)に係る対応についても触れられており、このようなビジネスは、明らかな法令違反ではないものの、利用企業と障害者との間で業務内容・就業場所の分離があることから、「障害の有無にかかわらずと共に働く」という理念から離れており、利用企業側における障害者への理解も深まらない、障害者のキャリア形成につながらない、障害者の就業を通じた成果物が利用企業の事業活動に有為に活用されない、利用ニーズの増大により「障害者雇用=コスト」という認識・構造が強まりかねない等の課題があることから、障害者雇用状況報告(6.1報告)に「障害者雇用ビジネス」を使用している場合の報告項目を追加する、「障害者雇用ビジネス」及び利用企業の望ましい在り方に向けたガイドラインを創設する(ガイドラインに沿っていない運営を行う事業者の利用は望ましくないことを含む)等の方向性が示されました。
次に、「障害者雇用率制度等の在り方について」では、障害者雇用促進法における「障害者」の定義には「その他の心身の機能の障害」として難病による心身の機能の障害も含まれるものの、雇用義務の対象は身体障害・知的障害・精神障害の手帳所持者に限られていることに関し、就労困難性が手帳所持者と同等以上と考えられる難病患者については、(手帳に依らず)個別に判定していく仕組みを検討する、手帳を所持していない精神・発達障害者に関しては、別途の基準を用いて雇用率制度の対象とする必要性・合理性が高いとはいえないため雇用率の対象は手帳所持者とする現行の仕組みを維持する、といった方向性が示されました。
筆者も最近、クライアント企業から「障害者雇用ビジネス」の下で雇用した労働者の処遇に関する相談を受けることが増えており、利用企業の増加を肌で感じているところです。法定雇用率引上げ後の実務の状況と併せて、労政審での今後の議論の動向に注目していきたいと思います。
~参考資料~
※厚生労働省リーフレット(事業主向け)「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」:こちら
※厚生労働省Webサイト「『今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書』を公表します(2026年2月6日):こちら
※厚生労働省Webサイト「労働政策審議会障害者雇用分科会意見書~今後の障害者雇用施策の充実強化について~」(2022年6月17日):こちら
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