女性特有の健康課題に関する健康管理支援
前回のコラムでは、女性活躍推進法の改正法(令和7年法律第63号、2025年6月11日公布、2026年4月1日施行)を取り上げましたが、今回のコラムも女性について取り上げます。
厚生労働省では、2023年に「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」が設置されました。これは、近年の社会情勢として、女性の就業率の増加に伴って女性の健康課題への対応の重要性が一層高まっていることや、いわゆる女性版骨太の方針2023(2023年6月13日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)において「事業主検診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加する」とされたことなどを踏まえたものです。2023年12月5日開催の第1回から2025年12月17日開催の第11回まで議論が行われ、その結果を取りまとめた報告書が2025年12月24日に公表されました。また、2024年11月1日には、第1回から第8回(2024年10月18日開催)までの議論を踏まえた「中間とりまとめ」が公表されました。
「中間とりまとめ」を含む報告書では、女性の健康課題に関する検診項目に関し、労働安全衛生法に基づく定期健康診断(事業者健診)における一般健康診断問診票に、女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害等)に係る質問を追加することが適当であるとともに、女性特有の健康課題で職場において困っている労働者に対して専門医の早期受診を勧奨することとされました。これを受けて、厚生労働省は2026年1月19日に「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル ~健診機関向け~」と「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル ~事業者向け~」を公表しました。
事業者向けのマニュアルでは、まず、このマニュアルのねらいとして、「女性の健康問診は、業務との直接的な関連性や作業関連疾患としての位置づけが限定的であるため、事業者に義務付けられているものでは」ないということ、また、「その目的は、女性自身の健康状態への気づきを促し、必要に応じて労働者が医療機関へアクセスできるよう支援することにあり」、「女性の健康問診の回答を健診機関から事業者に直接提供されることは」ないということが明らかにされています。その上で、「基本情報」として、月経困難症、過多月経症、月経前症候群(PMS)及び更年期障害について簡単な紹介があり、さらに、事業者側の対応として、女性の健康課題にかかる対処方針決定から相談体制の整備、専門医を受診した労働者からの相談対応、職場環境の改善に関する基本的な手順や、簡単なQ&Aが紹介されています。
このマニュアルどおりの対応をすることは、上記のとおり事業者の義務ではありませんが、このような動きを通じて、女性が健康課題を抱えながら就業していること(があること)自体の認識が広まっていくことには大きな意義があると考えています。上記で紹介した「基本情報」の説明も参考になりますし、職場環境の改善に関して例示されている「具体的な配慮の選択肢」の内容は、女性が(密かに)抱えている不安感や状態などを可視化するもので、まずは、この可視化自体に意義があると感じます。
前回のコラムでご紹介した改正女性活躍推進法の基本原則(第2条第1項)において「女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活における活躍に係る男女間の格差の実情を踏まえ、(中略)女性の健康上の特性に留意して、その個性と能力が十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならない」と定められたことと相まって、あらゆる年齢の女性が、身体の仕組みとして何らかの健康課題を抱えながら就業していることが多い実情について、社会における認識が進み、理解が深まっていくことを願います。
~参考資料~
※厚生労働省Webサイト「『女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル』及び『女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル』を公表します」(2026年1月19日公開):こちら
※厚生労働省「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」報告書(2025年12月24日公開):こちら
*(別添)で「中間とりまとめ」(2024年11月1日公表)を含む
_______________________________________________________
▼当コラム担当の町田弁護士が「職場におけるカスタマーハラスメント対策」について解説します
『企業が備えるべきカスハラ対策と留意点』
(労働法学研究会・例会第2982回 ※会員様無料)
※3月上旬に収録しました最新の公表資料による解説です。
この機会にぜひご受講ください