JILPT「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」の公表

 JILPT(独立行政法人労働政策研究・研修機構)が2025年12月25日、労働政策研究報告書No.237「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」を公表しました。この調査研究は、労働政策審議会における解雇無効時の金銭救済制度に関する議論のために行われたもので、調査の対象は、2023年度内に4労働局で処理が完結したあっせん事案のうち、解雇型雇用終了事案(労働者側が解雇であると主張した事案であり、雇止めや退職勧奨、シフトカット、内定取消し等を含む)に該当する485件です。

 
 解雇無効時の金銭救済制度に関する議論には、ずいぶん長い時間を要している印象があり、立ち消えになったのかなと思ったこともありました。今回の報告書の冒頭では、解雇の金銭救済制度の検討経緯もまとめられており、そのあたりの記述も非常に参考になります。それによると、遡ること2015年3月25日、規制改革会議が「『労使双方が納得する雇用終了の在り方』に関する意見-紛争解決の早期化と選択肢の多様化を目指して-」と題するペーパーを公表し、厚生労働省等において検討すべき議論の方向性を示しました。その後、同年10月、厚生労働省に「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が設置され、2017年5月31日に検討会の報告書が公表されました。さらに議論が引き継がれ、2022年4月12日、厚生労働省に設置された「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」報告書が公表され、現在の、労働政策審議会労働条件分科会での議論に引き継がれています。同分科会では、ここ最近は、労働基準関係法制の改正に関する議論がメインとなっていましたが、2025年11月18日に開かれた分科会(第205回)では、本コラムでご紹介の、あっせんに関する調査研究結果が示され、有識者検討会を新たに設置する方向性が示されました。

 
 さて、あっせんに関する調査研究結果について、まず、あっせんでの合意成立は485件中180件(37.1%)、不参加は207件(42.7%)とのことです。参加件数については、報告書上明示がないようですが、単純に総数から不参加件数を引くと278件となりますので、参加件数のうち6割程度は合意が成立しているといえるのではないかと考えられます。あっせん申請日から終了日までの期間については、合意成立事案における中央値では2.05月とのことですが、数年前から紛争調整委員を務める私の肌感覚としては、近年の申請件数の多さゆえ、申請日からあっせん期日までの期間は、もう少し長いことが多いと感じます。ただ、紛争発生からあっせん期日当日までの時間経過が、ある程度のクールダウンをもたらし、歩み寄りしやすい心理状態となっているように感じることもありますので、期日の早期開催が常に望ましいとは思いません。また、労働審判や裁判と比べれば短期で、かつ、費用・対応面のコストが圧倒的に小さいという点は、あっせんの大きなメリットであると感じます。

 
 解決金額の中央値については、23.5万円、解決金が賃金の何か月分か、については、2か月分未満が7割を超え、中央値は1.03か月分とのことで、(過去調査時よりは上昇しているものの)「労働審判や裁判上の和解と比べると著しい低水準」とのことです。ただ、労働審判や裁判上の和解とは異なり、あっせんは、証拠に基づく事実認定や一定の心証形成を前提に調整を図る手続ではなく、あくまで当事者間の譲り合いによる解決を目指す手続で、適法か違法かが判然としない中での調整となることも多く、当事者の説得には制度上の限界があります。そういった手続の質的差異を前提に調査結果を受け止めるべきであり、また、あっせんの参加者にも、手続の性質や長短についての正しい理解がさらに広まることを願っています。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

~参考資料~
 
※独立行政法人労働政策研究・研修機構2025年12月25日付「労働政策研究報告書No.237 労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」:こちら

 
※厚生労働省2025年11月18日(第205回)労働政策審議会労働条件分科会資料2-1「労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案の分析」(概要):こちら

 
※内閣府規制改革会議2015年3月25日付「『労使双方が納得する雇用終了の在り方』に関する意見-紛争解決の早期化と選択肢の多様化を目指して-」:こちら

 
※厚生労働省2017年5月31日付「『「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」報告書』」:こちら

 
※厚生労働省2022年4月12日付「『解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会』報告書」:こちら

 
※厚生労働省2022年10月26日(第181回)労働政策審議会労働条件分科会資料5「解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について」:こちら

 
※厚生労働省労働基準局作成2024年5月10日付「労使双方が納得する雇用終了の在り方について」(規制改革推進会議 働き方・人への投資ワーキング・グループ(第7回)資料):こちら

 
※厚生労働省Webサイト「『令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況』を公表します」(2025年6月25日):こちら

 

(2026年01月30日)

 

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