2025年の立法動向と今後の展望
2025年も残りわずかとなりました。本年の主な法改正を振り返ってみたいと思います。
まず、5月に、労働安全衛生法等の改正法が成立しました。改正点は、個人事業主が混在する作業における注文主の災害防止措置その他個人事業主に対する安全対策の強化(2026年4月1日~2027年4月1日に順次施行)や、労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェック制度の義務化(改正法が公布された2025年5月14日から3年以内の政令で定める日に施行)、高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置についての事業主の努力義務化(2026年4月1日施行)などです。小規模な企業におけるストレスチェック制度の義務化に関しては、厚生労働省において「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」が開催され、第9回(2025年11月20日開催)には、ワーキンググループが作成した「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル(素案)」が示されました。また、高年齢労働者に関しては同省の「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」で検討が進められ、第4回(2025年12月8日開催)では、高年齢者の労働災害防止のための指針案や検討会報告書案が議論されています。
続いて、6月に、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法、女性活躍推進法の改正法が成立しました。労働施策総合推進法の改正点は、カスタマーハラスメントに関する事業主の防止措置義務等の導入(2026年10月1日施行)や治療と仕事の両立支援に向けた措置の努力義務の導入(2026年4月1日施行)、男女雇用機会均等法の改正点は、いわゆる就活セクハラに関する事業主の防止措置義務等の導入(2026年10月1日施行)です。女性活躍推進法の改正点は、男女間賃金差異や女性管理職比率の情報公表について101人以上(現在301人以上)の事業主に義務付け(2026年4月1日施行)、女性活躍推進は女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨の明確化(2025年6月11日(公布日)に施行済み)、プラチナえるぼしの認定要件に就活セクハラ防止措置内容の公表を追加(2026年10月1日施行)、などです。
同じく6月、公益通報者保護法の改正法が成立しました(2026年12月1日施行)。公益通報者保護制度の強化を目的とするもので、改正点は、公益通報をしたことを理由とする不利益取扱いのうち解雇と懲戒処分について刑事罰の導入(解雇・懲戒処分の行為者個人は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金刑、法人は3000万円以下の罰金刑)、公益通報から1年以内(又は外部への公益通報を知ってから1年以内)に行われた解雇と懲戒処分の民事上の効果に関し公益通報を理由として行われたものと推定する規定の導入(立証責任の転換)、正当な理由なく公益通報者である旨を明らかにするよう要求するなどの通報者探索行為禁止の明文化(違反に対する刑事罰なし)、従事者指定義務違反に対する行政措置権限の強化(常時雇用者数300人超の企業が対象)や従事者指定義務違反を通報対象事実として明文化等、多岐にわたっており、どの企業においても施行までに改めて内部通報制度体制を見直すことが求められるでしょう。
2026年の立法に向けた動きとしては、何よりも労働基準法の改正動向が気になるところです。労働政策審議会(労働条件分科会)における議論は深まっていますが、近時、改正法案提出時期も含めて見通し不透明となっているような報道にも接しています。2026年のうちにどこまで進むでしょうか。
来年も本コラムをどうぞよろしくお願いいたします。
~参考資料~
※厚生労働省Webサイト「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」:こちら
※厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」第9回(2025年11月20日開催)資料:こちら
※厚生労働省Webサイト「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」:こちら
※消費者庁Webサイト「公益通報者保護法と制度の概要」:こちら
※厚生労働省労働政策審議会(労働条件分科会)Webサイト:こちら
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