「テレワークガイドラインの改定」

 厚生労働省は、2018年2月に「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン、通称「テレワークガイドライン」)を公表しました。この改定に向けた議論が2020年8月から「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」において行なわれ、2021年3月16日に開催された労働政策審議会労働条件分科会で改定最終案が審議され、近日中に公表される予定です。

 

 今回の改定では、テレワークの推進を目指すガイドラインであることを明確にするべく、名称が「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に変更されます。

 

 ガイドラインの目次も大幅に増え、①趣旨、②テレワークの形態、③テレワークの導入に際しての留意点、④労務管理上の留意点、⑤テレワークのルールの策定と周知、⑥様々な労働時間制度の活用、⑦テレワークにおける労働時間管理の工夫、⑧テレワークにおける安全衛生の確保、⑨テレワークにおける労働災害の補償、⑩テレワークの際のハラスメントへの対応及び⑪テレワークの際のセキュリティへの対応、の全11項目となる予定です。

 

 テレワークは、コロナ禍対応としてここ1年で急速に普及し、労働時間管理や社内コミュニケーションの在り方などに関する議論が大きく進展しました。今回のテレワークガイドラインの改定も、基本的には、これまでなされてきた議論を後追いしたものといえ、特段目新しい内容は含まれていないようですが、テレワークの実施にあたり確認・検討すべき事項が網羅的にまとめられていますので、一通り目を通すことは有益でしょう。また、事業場外みなし労働時間制に関して、いかなる状況であれば「労働時間を算定し難い」(労働基準法38条の2)と評価できるのかがより具体的に示された点は参考になります。もっとも、改定案が示す「労働時間を算定し難い」状況に該当するような、従業員の裁量性の高い形でテレワークを実施している企業は限定的であると思われますので、やはり、事業場外みなし労働時間制の適用の範囲は狭く、一般的には、通常の労働時間管理が求められることが多いのではないかと思われるところです。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

(2021年3月22日)

 

※「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(案)」:こちら

 

※「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(案)」の趣旨・骨子等
(2021年3月16日開催・第167回労働政策審議会労働条件分科会資料」:こちら

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