「男性の育休取得促進等今後の育児介護休業法の改正予定」

 厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会では、2020年9月以降、男性の育児休業取得促進策等について検討が行われてきました。そして、2021年1月18日、検討結果を取りまとめた報告書(以下「報告書」)の内容をふまえて労働政策審議会から厚生労働大臣に対し建議が行われました。その後1月27日に開催された同分科会では、育児介護休業法の一部改正に関する法案要綱(以下「法案要綱」)について審議されています。

 

 法案要綱によると、育児介護休業法の改正項目は、①主として男性の育児休業取得促進のため、出生時育児休業の新設や育児休業の分割取得(2回まで)の許容、②男性に限らず育児休業等の制度利用の促進に向けて事業主が講ずべき措置の追加、③雇用期間の定めがある者による育児休業・介護休業の取得要件の緩和、④育児休業等の取得率の公表等のようです。施行予定時期について、法案要綱では、①は改正法公布日から1年6か月以内の政令で定める日、②と③は2022(令和4)年4月1日、④は2023(令和5)年4月1日とされています。

 

 ①のうち、出生時育児休業とは、子の出生日から8週間(すなわち産後休業期間と同一期間)内に、4週間(すなわち約1か月)以内の期間を定めて行う休業であり、原則として開始予定日の2週間前までに申し出るものとされる予定です(有期雇用の場合も、子の出生日から8週間経過日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでなければ申出可)。そして、労使協定の締結により、休業中であっても部分的に就業できるものとされる予定である点が非常に新しいものといえます(報告書によると、休業中の就労は労働者が同意した場合に限られ、休業期間の労働日の半分を就労可能日数の上限となる見込みです)。このような制度設計とされた理由は、報告書によれば、育児休業を取得した男性の半数近くが子の出生後8週間以内に取得しており、この時期の取得ニーズが高いと思われること、また、子の出生直後という重要な時期の休業取得を促進することで、育児の大変さ・喜びを実感し、その後の育児につなげていくことなどにあります。休業中の就労を部分的に可とすることについては、女性が産後休業期間中であることを踏まえたものであり、今後一層在宅勤務やテレワークが定着していけば、男性の育児参加と職場の理解促進の手がかりとして、使い勝手のよいものとなるものと期待されます。

 

 ②は、事業主が労働者から自身又は妻が妊娠又は出産した等の申出を受けた場合に、当該労働者に対して育児休業に関する制度等を個別に案内するとともに、育児休業の取得に関する意向確認を行うこと、さらに、その申出が円滑に行われるようにするため、労働者全体に対して、育児休業にかかる研修の実施、相談体制の整備等の措置を一つ講じることなどです。

 

 ③は、有期雇用の場合、育児休業及び介護休業を取得するには、現行法では、取得申出の時点で、(ア)雇用期間が1年以上であること、及び、(イ)子が1歳6か月に達する日までに労働契約が終了することが明らかでないこと、の2つの要件を満たす必要がありますが、(ア)の要件が削除される見込みです。

 

 ④は、常時雇用する労働者の数が1000人を超える事業主について、毎年少なくとも1回、男性の育児休業等取得率か、又は、育児休業等及び育児目的休暇の取得率を公表することを義務付けるものです。

 

 以上について、今後、法案作成及び法案審議が行われていくことになります。施行予定時期はまだ先ですが、変更点は意外と多く、また、就業規則の変更を伴うとともに、実務対応上も影響があるものと思われますので、引き続き動向を注視し、情報のアップデートがあれば本コラムでご紹介していきます。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

(2021年2月5日)

 

※育児介護休業法一部改正法案要綱:こちら

※男性の育児休業取得促進策等について(建議):こちら

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