「労働法の世界における脱ハンコの流れ」

 2020年は脱ハンコの流れが進み、労働法の世界にも改正の動きが出ています。

 

 厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会の労働条件分科会は、脱ハンコに向けた労働基準法施行規則等の改正案要綱について、2020年11月13日、概ね妥当と答申しました。この先、具体的な条文化が進められ、2021年4月1日より改正された施行規則が施行される予定です。

 

 改正案の主な内容は、労働基準法や最低賃金法等の規定に基づいて使用者が行政に届け出るものとされている書面に関し、「署名又は記名押印」と定められているところを、使用者や過半数代表者等の「氏名の記載」に変更する、というものです。例えば、就業規則の作成・変更を所轄の労働基準監督署長宛に届け出る際に添付する過半数代表者等の意見書(労働基準法90条)について、現在は、「法第90条第2項の規定により前項の届出に添付すべき意見を記した書面は、労働者を代表する者の署名又は記名押印のあるものでなければならない。」(労働基準法施行規則49条2項)と定められていますが、これが、「…意見を記した書面は、労働者を代表する者の氏名を記載したものでなければならない。」といった内容に変更される、ということです。

 

 このほか、36協定や変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制・高度プロフェッショナル制度・事業場外労働等の労働時間制度に関する各種労使協定の届出様式については、使用者が押印する欄が削除されます。加えて、新たな届出様式では、(これは脱ハンコのためではなく、過半数代表者等の選任手続の適正化のためと思われますが、)届出書に記載された過半数労働組合や過半数代表者が、事業場の全ての労働者の過半数で組織されたもの、又は、過半数を代表する者であるとともに、労働基準法施行規則6条の2第1項各号(①管理監督の地位にある者でないこと、②法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。)のいずれにも該当する者である旨を示すチェックボックスが設けられることになります。

 

第一芙蓉法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

(2020年12月14日)

 

※ 参考:「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」の答申|厚生労働省 (mhlw.go.jp):こちら

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