労働政策審議会 雇用環境・均等分科会の動き

 今回のコラムでは、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会の動きをご紹介します。

 
 直近では9月8日に開催され(第83回)、議題は盛りだくさんでしたが、その中の一つは、本年6月に改正された労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法、女性活躍推進法などの施行に向けた対応です。

 
 この改正は、労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法については、主に、カスハラ対策や就活セクハラ対策の義務化(いずれも公布日である本年6月11日から1年6か月以内の政令で定める日に施行、つまり、2026年のうちには施行)など、女性活躍推進法の改正は、主に、男女間賃金差異や女性管理職比率の公表義務を常用労働者101人以上の企業への拡大(2026年4月1日施行、現在は301人以上の企業)などです。詳しくは本年6月に公開した本コラムをご覧下さい。

 
 施行に向け、今後は、法に基づく指針の改正に関する検討(ハラスメント対策関係では、消費者・障害当事者団体のヒアリングを含みます)などが行われ、現時点では、女性活躍推進法の改正に関しては本年中に、労働施策総合推進法の改正に関しては2026年の早い時期に、方向性が見えてくる予定のようです。指針は、改正法対応の要ですので、本コラムでも今後随時ご紹介していきたいと思います。

 
 それから、同じ日の分科会では、仕事と介護の両立支援に関しても議題となったようです。厚生労働省では、本年4月から7月にかけて、「令和6年育児・介護休業法改正を踏まえた実務的な介護両立支援の具体化に関する研究会」を開催していました。育児・介護休業法の2024年改正では、介護と仕事の両立支援に関して、3つの措置、すなわち、①雇用環境の整備、②40歳頃の早期の情報提供、③個別周知・意向確認が措置義務化されました(本年4月1日に施行済み)。介護に直面した労働者が「介護に専念する」ことは必ずしも想定されていない点は、育児とは違った観点が必要となり、介護と仕事の両立を企業はどのようにサポートすべきか、①②③について一体的なイメージを持ち、パッケージで企業が取り組めるようにするための支援ツールが検討することを目的として、この研究会が開催されました。そして、議論の成果が、「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」として本年8月29日に公表されました。この支援ツールには、別冊として参考資料集も付いており、これまで育児・介護休業法の改正法に関する資料の一つとして公表されていたものも含めて、①→②→③という順で整理されています。

 
 上記のとおり、①②③は既に施行済みですが、まだ十分に対応できていない企業も多いようです。そして、育児・介護との両立支援も、カスハラ対策や就活セクハラ対策のようなハラスメント対策も、女性活躍に向けた取り組みも、全て就業環境の整備という観点で連動し合うものですので、改正法対応を経て、よりよい就業環境の構築に向けた好循環が社会に定着していくことを願います。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 

~参考資料~
 
※厚生労働省 労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)Webサイト:こちら

 
※厚生労働省 労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)Webサイト-第83回(2025年9月8日開催)のページ:こちら

 
※厚生労働省Webサイト「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツールを公表します」:こちら

 

(2025年09月29日)

 

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