「働く女性の実情」と雇用均等基本調査

 今回のコラムでは厚生労働省が毎年公表している「働く女性の実情」と雇用均等基本調査をご紹介したいと思います。どちらも令和5(2023)年版まで公表されています。

 
 「働く女性の実情」は、昭和28(1953)年から毎年、働く女性に関する動きを取りまとめているものです。雇用均等基本調査は、男女の雇用均等問題に関する雇用管理の実態を把握するために毎年実施されています。令和5(2023)年はどちらも、基本的に10月1日現在の状況について、10月の1か月間に調査が実施されました。厚生労働省労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)では現在、女性活躍推進や職場におけるハラスメント対策について法改正等に向けた議論が進められていますが、その中でも、こういった調査結果が議論の土壌の一つとなっています。

 
 「令和5年版 働く女性の実情」は「Ⅰ 令和5年の働く女性の状況」と「Ⅱ 働く女性に関する対策の概況」の二部構成で、Ⅰは、①概況、②労働力人口、就業者、雇用者の状況、③労働市場の状況、④労働状権等の状況、⑤短時間労働者の状況、⑥家内労働者の就業状況の計6節で構成されています。Ⅱは、①雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等対策の推進等、②仕事と生活の調和の実現に向けた取組、③非正規雇用労働者の均等・均衡待遇の推進、④多様で柔軟な働き方の推進・環境整備、⑤家内労働対策の推進、⑥女性の能力発揮促進のための援助の計6節で構成され、女性に関する様々な施策の状況を横断的に把握・確認できるという点でも参照価値があります。

 
 「令和5年度 雇用均等基本調査」は、企業調査と事業所調査があり、企業調査では、正社員・正職員の状況や管理職・昇進について、不妊治療と仕事との両立支援制度、ハラスメントに関する対策等の取組状況などが、事業所調査では、育児・介護休業制度や多様な正社員制度に関する事項などが調査対象となりました。

 
 令和5(2023)年の女性の労働力人口と女性雇用者数は、前年に比べてどちらも28万人増加し、前者は3124万人(男性を含めた総数は6925万人)、後者は2793万人(同総数6075万人)でした。一般労働者(常用労働者のうち短時間労働者以外の者)の所定内給与額は女性が26万2600円、男性が35万900円で、賃金格差をもたらす最も大きな要素が役職、続いて勤続年数となっています。

 
 雇用均等基本調査によれば、課長相当職以上(役員を含む)の女性を有する企業割合は54.2%、部長相当職ありの企業割合は12.1%で、前年度から微増してはいるものの、ここ10年程度の推移は「横ばい」に近い状況です。また、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.7%で前年度と同率でした。

 
 これに対し、顕著に増加しているのが男性の育児休業取得者の割合です。育児休業・出生時育児休業を取得した男性社員がいた事業所の割合は37.9%で、前年度より13.7ポイント上昇しました。また、男性の育児休業等の取得期間についても、令和3(2021)年度は「5日~2週間未満」が最も多かったですが(26.5%)、令和5(2023)年度は「1か月~3か月未満」が最も多くなりました(28.0%)。

 
 女性の管理職等の割合は、企業規模によっても異なるとは思いますが、このような調査結果において増加傾向が見受けられないことは、一つの現実として重く感じます。一括りに女性といっても、ワークとライフのバランスの容易さ・困難さはライフステージその他の状況によって異なるもので、女性の一層の活躍の実現に向け、様々な施策を複合的に進めていく不断の努力を欠かさぬことの大切さに改めて思いを致しました。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 
 

※令和5年版「働く女性の実情」:こちら

 
※令和5年版「働く女性の実情」のポイント(厚生労働省):こちら

 
※令和5年度 雇用均等基本調査:こちら

 
※令和5年度 雇用均等基本調査のポイント(厚生労働省):こちら

 

(2024年11月27日)

 
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