「募集・採用における年齢制限の禁止と例外」

 労働施策総合推進法(旧雇用対策法)第9条は、募集及び採用について、事業主に対し、一定の場面を除き年齢にかかわりのない均等な機会を確保するよう求めています。求人票では年齢不問としながらも、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定したり、採用の上限・下限年齢を設けたりすることは、年齢制限の禁止が解除される場面に該当しなければ、同法違反となります。違反に対する罰則はありませんが、行政指導を受けることがありますし、法に違反した求人は、ハローワーク等に受理を拒否されることがあります(職業安定法5条の6第1項第1号)。コロナ禍が収束に向かう中で再び人材不足に直面している企業は少なくないと思われますので、採用担当者におかれては、後掲のリーフレットなどを活用し、採用に関するルールを改めて確認する機会を持つことは有益ではないかと思います。

 
 年齢制限の禁止が解除される場面には、定年の定めがある場合(定年を下回る人材の募集)や新卒採用の場合(長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を無期雇用する場合)、法律により年齢制限が設けられている業種の場合(警備業法の警備業務等)などがありますが(労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項各号)、そのうちの一つに、いわゆる就職氷河期世代の人材に絞った募集・採用があります(同項第3号ニ)。これは、2020年2月の省令改正(施行規則付則第10条の追加)により、2023年3月31日までの暫定措置として、就職氷河期世代で安定した職業に就いていない人(不安定就労者・無業者)の雇用を促進するため、その世代を対象とした募集及び採用が可能とされました。

 
 その後、2022年6月に政府が策定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(2022年6月7日閣議決定)において、就職氷河期世代の支援に関し、2022年度までの3年間の集中取組期間に加え、2023年度からの2年間を「第二ステージ」と位置づけて、これまでの施策の効果を検証の上で効果的・効率的な支援を実施するべく、民間企業での採用等を促す等の方針が盛り込まれたことを受けて、今般、暫定措置についても、省令(施行規則付則第10条)の改正により、2025(令和7)年3月31日まで延長することとされました。延長後の暫定措置の対象範囲は「昭和43(1968)年4月2日から昭和63(1988)年4月1日までの間に生まれた者」となります(省令改正は2023年4月1日施行です。)。これに伴い、厚生労働省が作成した「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」についても内容が更新されています。

 
 このほか、採用の場面でのルールの一つとして、労働条件明示に関するルールが2024年4月から変更されることとなりました(2023年3月労働基準法施行規則改正)。これについても今後またこのコラムで紹介していきます。

 

五三・町田法律事務所 弁護士 町田悠生子

 
 

※厚生労働省リーフレット(事業主向け)「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?-年齢にかかわりなく、均等な機会を-」:こちら

 
※厚生労働省Webサイト「採用・選考時のルール」:こちら

 
※厚生労働省作成「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A(令和5年4月1日現在)」:こちら

 
※厚生労働省リーフレット「就職氷河期世代を対象とする募集・採用について特例期限を令和6年度末まで延長します」(令和5年3月):こちら

 
※令和5年2月15日労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(第103回)資料2「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案概要」:こちら

 

(2023年4月25日)

 

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