労働判例ジャーナル35号(2015年・2月)

■注目判例

役職の降格に伴う職務給および役職手当の減額

TBCグループ事件
東京地裁(平成26年10月15日)判決

■ポイント

 会社がどの役職に誰を配置するのかは,幅広い裁量に委ねられていることは法的にも一般的に承認されていることである。使用者の役職についての裁量権は,降格(降職とも言う)もその範囲にある。問題は,役職の降格に伴う賃金の引下げが許されるかである。賃金の引下げは,労働条件の不利益変更にあたるので,役職の降格のように,簡単に使用者の裁量の範囲と言えないからである。
 広く普及した職能資格制度のように,特定の職能資格に基本給が割り当てられている場合には,役職の降格は,ストレートに基本給の低下につながるわけではない。
 役職自体に対応する手当が減額されるに留まる。もっとも,人事制度および賃金制度は,画一的なものではなく多様である。役職の降格に伴ってどの程度の賃金の引下げが可能かは,具体的な人事制度および賃金制度の在り方によって定まるのである。
 本件は,この問題を検討するうえで素材を提供する事案ということができる。
 もっとも,本判決は,役職の降格に伴う職務給および役職手当の減額を結論的には無効とした。それは,役職の降格自体が人事権の濫用として無効とされたからである。
 本件のように,職務給部分の比重が賃金全体のなかで高い場合には,降格についての人事権濫用の一要素となるのであろうか。今後の検討課題となろう。
 

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目次

【注目判例】

◆ 役職の降格に伴う職務給および役職手当の減額

TBCグループ事件

東京地裁(平成26年10月15日)判決

◆ 私立高校非常勤講師に対する雇止め

学校法人錦城学園事件

東京地裁(平成26年10月31日)判決

◆ 酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分取消請求

秋田県(懲戒免職処分取消請求)事件

秋田地裁(平成26年10月31日)判決

◆チェックオフによる組合費納入の不当利得性

大和自動車交通労働組合事件

東京地裁(平成26年10月29日)判決

◆雇用契約に基づく未払賃金支払請求

ヒューガ塗装工業事件

東京地裁(平成26年10月22日)判決

◆休業補償請求と症状固定(精神障害の治癒)

池袋労基署長(精神障害)事件

東京地裁(平成26年10月20日)判決

◆ 過労によるうつ病自殺に対する損害賠償請求

肥後銀行事件

熊本地裁(平成26年10月17日)判決

◆労働者に不利な能力手当算定に係る合意の有無

みつわ巧芸事件

東京地裁(平成26年10月17日)判決

◆高齢運転手の脳出血に対する業務起因性

富士労基署長(脳出血)事件

静岡地裁(平成26年10月16日)判決

◆精神障害に対する休業補償給付不支給処分取消請求

国・中央労基署長(精神障害)事件

東京地裁(平成26年10月9日)判決

◆覚せい剤の所持等に基づく懲戒免職等処分取消請求

東京都・東京都交通局長事件

東京地裁(平成26年10月9日)判決

◆ 飲食店に対する未払賃金等支払請求

未払賃金等支払請求事件

東京地裁(平成26年10月9日)判決

◆ ホテル従業員の未払賃金支払請求

西葛西ホテル事件

東京地裁(平成26年10月6日)判決

◆ 上司の発言に基づく上司等に対する損害賠償等請求

ダイビル・ファシリティ・マネジメント事件

大阪地裁(平成26年9月25日)判決

◆ 適格性欠如を理由とする解雇無効地位確認等請求

石原産業事件

大阪地裁(平成26年9月25日)判決

◆ 労働契約終了合意不存在に基づく地位確認等請求

アクアクララ事件

大阪地裁(平成26年9月4日)判決

◆ 大阪市長のした行政財産等使用不許可処分取消等請求

大阪市(行政財産等使用不許可処分取消等請求)事件

大阪地裁(平成26年9月10日)判決

◆ 組合員らに対する傷害行為に基づく損害賠償請求

全日本建設運輸連帯労働組合事件

大阪地裁(平成26年9月8日)判決

◆ 国家公務員の給与を減額する法改正への差額請求

国家公務員給与減額事件

東京地裁(平成26年10月30日)判決

 

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