労働判例ジャーナル158号(2025年・5月)

■注目判例

時給制契約社員に対する寒冷地手当不支給の適法性

日本郵便(寒冷地手当)事件

■ポイント

 本件は,日本郵便(本件会社)との間で有期労働契約を締結していた時給制契約社員ら(本件・契約社員ら)が,本件会社に対し,正社員に支給される寒冷地手当が本件契約社員らに支給されないことが労働契約法旧20条(法20条)に違反すると主張して,不法行為に基づき,損害賠償の支払いを求めた事案である。本判決は,原審判決(札幌地判令5・11・22)が本件契約社員らの請求をいずれも棄却したので,本件契約社員らが控訴したものであるが,原審判決と同様に請求を棄却した。
 本判決も労契法旧20条の解釈において,判例の流れを踏襲する手法をとっていると言える。本判決の特徴は,寒冷地手当の目的について正社員が全国一律で基本給の支給額を定めていることから,寒冷地域に在勤する正社員に対し,寒冷地域であることに起因して増加する燃料費等に係る生計費を補助することにより生計費の負担を軽減し,正社員間の公平を図るものとしたところに特徴がある。
 もっとも,寒冷地手当によって補われる正社員の生計費と時給制契約社員の基本給での考慮された金額が均衡すると考えることができるのかという論点は残されているように思われる。

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目次

◆ 時給制契約社員に対する寒冷地手当不支給の適法性

日本郵便(寒冷地手当)事件

札幌高裁(令和7年2月7日)判決

◆ インセンティブ支払合意に基づく未払賃金等支払請求が斥けられた例

AQUA INVESTMENT事件

東京地裁(令和6年11月27日)判決

◆ 人事評価及び配置転換に不当な点はないとして,損害賠償等請求が斥けられた例

ヴィアトリス製薬事件

東京地裁(令和6年11月27日)判決

◆ 業務委託契約成立は認められないとして,未払賃金等支払請求が一部認められた例

トラベルプランニングオフィス事件

大阪地裁(令和6年11月27日)判決

◆ 労働契約法上の「労働者」には該当しないとして,地位確認等請求が斥けられた例

MIKATA事件

東京地裁(令和6年11月26日)判決

◆ 精神障害発病に基づく療養補償給付等不支給処分取消請求が斥けられた例

国・足立労基署長事件

東京地裁(令和6年11月25日)判決

◆ 休憩時間につき,未払賃金等支払請求が斥けられた例

ヤマトシステム開発事件

東京地裁(令和6年11月20日)判決

◆ ストーカー行為等に基づく懲戒処分(停職6月)取消請求が斥けられた例

東京都公営企業管理者水道局長事件

東京地裁(令和6年11月14日)判決

◆ 休職期間満了に伴う退職の無効地位確認等請求及び損害賠償等請求が斥けられた例

旭食品事件

東京地裁(令和6年11月14日)判決

◆ パワハラに基づく損害賠償等請求が一部認められた例

N労務管理事務所事件

東京地裁(令和6年11月13日)判決

◆ 未払退職金等支払請求が一部認められた例

日本経営通信社事件

大阪地裁(令和6年11月7日)判決

◆ 勤務成績不良等を理由とする解雇無効地位確認請求が認められた例

ギットハブ・ジャパン事件

東京地裁(令和6年11月1日)判決

◆ わいせつ行為を理由とする懲戒解雇無効地位確認等請求が斥けられた例

大塚商会事件

東京地裁(令和6年10月25日)判決

◆ 無断録画行為等を理由とする解雇無効地位確認請求が認められた例

学校法人日本学園事件

東京地裁(令和6年10月24日)判決

◆ 使用者責任及び債務不履行に基づく会社に対する慰謝料等請求が一部認められた例

ジャパンチキンフードサービス事件

東京地裁(令和6年10月22日)判決

◆ 未払退職金等支払請求が一部認められたが,損害賠償等請求が斥けられた例

マニュライフ生命保険事件

東京地裁(令和6年10月22日)判決

◆ 解雇無効地位確認等請求が認められた例

aidea事件

東京地裁(令和6年10月16日)判決

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