労働判例ジャーナル134号(2023年・5月)

■注目判例

公立学校教員の時間外労働手当請求

埼玉県公立小学校教員(時間外労働手当)事件

■ポイント

 本件は,埼玉県の公立学校教員が,公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下,「給特法」という)による教職調整給が予定する時間外労働がいわゆる超勤4項目に限定されており,それ以外の勤務外時間については,労基法37条に基づく時間外労働手当が発生するなどとして県に割増賃金の請求などをした事案である。
 公立学校教員は,児童・生徒への教育的見地から,教員の自律的な判断による自主的,自発的で,創造性のある業務への取組みが期待されるという職務の特殊性などから定量的な時間管理が馴染まないという認識から給特法により,給与月額の一律4%の教職調整給の支給をもって労基法の割増賃金制度の適用を排除している。
 本判決の原審は,給特法は,超勤4項目の職務以外の時間外労働についても労基法37条が適用除外しているという解釈から本件教員の請求を退け,本件判決は,これを不服とする本件上告および上告受理申立てを認めなかった。いずれの解釈が妥当かは,議論を呼ぶであろうが,いずれにしても教員の長時間労働が教員という仕事の魅力を奪う一因となっていることからすれば,教員の職務の特殊性を踏まえた立法的対処が求められる課題といえよう。

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目次

◆ 公立学校教員の時間外労働手当請求

埼玉県公立小学校教員(時間外労働手当)事件

最高裁第二小法廷(令和5年3月8日)判決

◆ 適応障害発症の業務起因性

国・姫路労基署長事件

大阪地裁(令和5年1月30日)判決

◆ 合意解約及び自然退職扱い無効地位確認等請求

しのぶ福祉会事件

福島地裁(令和5年1月26日)判決

◆ 錯誤等に基づく退職合意無効地位確認等請求

ジェイネット事件

大阪地裁(令和5年1月24日)判決

◆ 未払歩合給および未払割増賃金等支払請求

トールエクスプレスジャパン事件

大阪地裁(令和5年1月18日)判決

◆ 不正アップロード行為を理由とする懲戒解雇の有効性

伊藤忠商事ほか1社事件

東京地裁(令和4年12月26日)判決

◆ 賃金相当額の損害賠償等請求

グラインドハウス事件

東京地裁(令和4年12月21日)判決

◆ アイドルの自死に基づく損害賠償等請求

Hプロジェクト事件

東京高裁(令和4年12月21日)判決

◆地位確認請求及び損害賠償等請求

東京都・東京都交通局長事件

東京地裁(令和4年12月19日)判決

◆未払割増賃金等支払請求

クロスゲート事件

東京地裁(令和4年12月13日)判決

◆ 業務上の疾病該当性と退職扱い無効地位確認等請求

足立通信工業事件

東京地裁(令和4年12月2日)判決

◆ 非常勤教員の期末手当等不支給に基づく損害賠償等請求

学校法人桜美林学園事件

東京地裁(令和4年12月2日)判決

◆ 勤務時間短縮を理由とする未払賃金等支払請求

クオール事件

東京地裁(令和4年12月2日)判決

◆ 経費不正請求等を理由とする解雇無効地位確認等請求

フレンチ・エフ・アンド・ビー・ジャパン事件

東京地裁(令和4年8月31日)判決

◆ 留学費用返還請求と損害賠償等請求

双日事件

東京地裁(令和4年8月30日)判決

◆ 民法536条2項に基づく未払賃金等支払請求

医療法人社団日岩会事件

東京地裁(令和4年8月24日)判決

◆ 教員としての適性欠如を理由とする雇止めの有効性

学校法人暁星学園事件

東京地裁(令和4年8月22日)判決

◆ 整理解雇の有効性

ゼリクス事件

東京地裁(令和4年8月19日)判決

◆ 勤務態度不良等を理由とする解雇の有効性

学校法人マスダ学院事件

東京地裁(令和4年8月17日)判決

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